黒毛和種のPit-1 遺伝子多型が子牛市場体重に及ぼす影響


[要約]
黒毛和種繁殖雌牛のPit-1 遺伝子多型と哺育能力や発育性に関する育種価推定値に関連があるかを検討した。Pit-1 遺伝子型により黒毛和種の哺育能力や発育性に差があることが示唆された。

[キーワード]黒毛和種、Pit-1 遺伝子、直接遺伝効果、母性遺伝効果

[担当]岐阜県畜研・飛騨牛研究部
[代表連絡先]電話:0577-68-2226
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
ウシPit-1 遺伝子は下垂体特異的な転写因子であり、成長ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン遺伝子の発現を制御しているといわれている。Pit-1 遺伝子多型は、乳牛のミルク生産性や肥育牛の枝肉形質に影響を与えていると報告されている。Pit-1 は第6エキソンに多型が見られ、1ヵ所の塩基置換により、(1178A/1178G)、Aアレル(1178A)とBアレル(1178G)が存在する。黒毛和種の哺乳能力や子牛時の初期発育能力の改良に資するために、岐阜県内の同一農場で飼養されている124頭の繁殖雌牛を用いて、Pit-1 遺伝子多型と黒毛和種の哺育能力や発育性の指標として、子牛市場体重の母性遺伝効果および直接遺伝効果の育種価推定値との関連について調査した。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種繁殖雌牛124頭のPit-1 遺伝子型頻度は、AA型41頭(33.1%)、AB型62頭(50.0%)、BB型21頭(16.9%)であった。対立遺伝子頻度はAアレル0.58、Bアレル0.42で あった(表1)。
2. 黒毛和種繁殖雌牛(124頭)の子牛市場体重における直接遺伝効果および母性遺伝効果 の育種価推定値において、Pit-1 遺伝子型間に有意差が認められた(表2)。
3. Pit-1 遺伝子型により黒毛和種の哺育能力や発育性に差があることが示唆された。

[成果の活用面・留意点]
1. 泌乳量に影響を与える遺伝子はPit-1 だけでなく、成長ホルモン、κ−カゼイン、DGA T1、成長ホルモンレセプター遺伝子等が報告されており、Pit-1 以外の遺伝子の効果や 遺伝子間相互作用についても留意する必要がある。
2. 黒毛和種の泌乳能力を的確に反映する指標作りと泌乳能力に影響する遺伝子解析を継 続する必要がある。

[具体的データ]
表1 岐阜県繁殖雌牛(124頭)のPit-1遺伝子型
表2 繁殖雌牛の子牛市場体重に関する育種価推定値
表3 繁殖雌牛の子牛市場体重に関する育種価推定値
図1 Pit-1遺伝子多型と直接、母性遺伝効果との関連

[その他]
研究課題名:DNA情報を利用した飛騨牛の育種改良手法の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:小林 直彦、傍島 英雄、松橋 珠子、山田 英信(全和協岐阜支部)

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