鶏への桑の葉粉末の給与は盲腸内のビフィズス菌を増やしpHを低下させる


[要約]
桑の葉粉末を添加した飼料を採卵鶏に給与すると、盲腸内のビフィズス菌が増加してpHが低下する。また、排せつ物からのアンモニアの発生も遅延・抑制される。

[キーワード]採卵鶏、桑粉末、腸内細菌、排せつ物、アンモニア

[担当]群馬県畜産試験場 中小家畜係
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
養鶏では食中毒菌等の有害な微生物のリスクを軽減するため、有用微生物が優位な腸内環境とすることを目的に、オリゴ糖や生菌製剤の給与が生産現場で行われている。
 一方、桑には腸管からの糖の吸収を阻害する作用があり、吸収されなかった糖質はオリゴ糖のように腸内微生物のエネルギー源となることが考えられる。
 そこで、群馬県産の桑の葉粉末(商品名 桑の花)を添加した飼料を採卵鶏に摂取させ、盲腸内の細菌や内容物のpHと排せつ物からのアンモニアの発生量について調査する。

[成果の内容・特徴]
1. 桑の葉粉末を0.5〜3.0%添加した飼料を採卵鶏(471〜510日齢、以下同)に給与すると、盲腸内のビフィズス菌が有意に増加する(図1)。また、ビフィズス菌の増加に伴い盲腸内容物のpHが低下し酸性となる(図2)。
2. 桑の葉粉末を0.1〜1.0%添加した飼料を採卵鶏に給与すると、添加量の増加に伴いアンモニアの発生が遅延・抑制される(図3)。
3. 以上のことから、鶏への桑の葉粉末の給与は、容易かつ簡便に盲腸内の有用微生物であるビフィズス菌を増やしpHを低下させることが可能であり、有用微生物優位の腸内環境作りに寄与できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 今回使用した群馬県産の桑の葉粉末は比較的高価(1,600円/kg)であるが、極微量(0.1 〜0.5%)で効果が期待できる。
2. 過去に採卵鶏と肉用鶏で桑粉末を3%添加した試験を実施しており、生産性を損なわず、鶏卵や鶏肉の食味を向上させることを確認しているが、桑の葉粉末を多量に飼料添加すると、飼料のエネルギー価が低下し生産性を低下させる可能性があるので注意が必要である。

[具体的データ]
図1  桑粉末添加による盲腸内ビフィズス菌の増加
図2 盲腸内ビフィズス菌量とpH
図3 桑粉末添加によるアンモニア発生の遅延・抑制

[その他]
研究課題名:地域性を加味した鶏卵・鶏肉の生産技術の研究
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:後藤美津夫・小材幸雄・山田正幸・松浦俊幸
発表論文等:平成20年度関東畜産学会要旨

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