エキスパンド処理とフィターゼを添加した飼料による豚のふん量とリン排せつ量の低減


[要約]
配合飼料をエキスパンド処理して30%混合し、肥育豚に給与すると消化率が向上してふんは約18%低減できる。
さらにこの飼料にフィターゼを添加した飼料を肥育豚に給与すると、ふんへのリン排せつ量は25%低減できる。

[キーワード]豚飼料、エキスパンド処理、フィターゼ、消化率、リン排せつ

[担当]群馬県畜産試験場 中小家畜係
[代表連絡先]電話:0279-88-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
養豚経営の中で家畜排せつ物の処理は多大な経費を要し、環境対策の低コスト化を念頭においた飼養管理技術が必要となっている。近年、ふん量やふん中の環境負荷物質低減の研究が進み、飼料に高温・高圧をかけて膨張させるエキスパンド処理や飼料中のリン利用率を向上させる酵素(フィターゼ)の効果が注目されている。。
そこで、肉豚肥育用飼料にエキスパンド処理とフィターゼを併用し、豚のふん量と堆肥施用の制限要因となっているふんへのリン排せつ量の同時低減効果を確認する。

[成果の内容・特徴]
1. 配合飼料をエキスパンド処理して市販されているものを30%混合すると、乾物および粗蛋白質の消化率は、市販飼料と比較して、それぞれ4.0%、7.3%と有意に向上するが、発育成績に差は認められない(表1)(表2)。
2. 乾物消化率が4.0%向上するため、飼料摂取量を3.5kg/日とした場合、排せつされるふん量は763g(3,500g×21.8%)から623g(3,500g×17.8%)へと18.3%(140g)低減する。
3. 上記の試験結果を基にエキスパンド30%飼料に無機リン(リン酸カルシウム)を添加せずに、フィターゼを800単位/kg添加(飼料原物中全リン含量:フィターゼ区0.42%、対照区0.45%)すると、リン消化率は27%向上し、ふん中のリン濃度も25%低減する(表3)。
4. 発育成績や血清中のリンおよびカルシウム濃度に影響はない(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 当技術を利用することによって、ふん処理の低コスト化が期待できる。
2. ふんへのリン排せつ量が低減されるため、堆肥の利用拡大が期待できる。

[具体的データ]
表1 供試飼料の一般成分(原物%)
表2 30%エキスパンド飼料の発育成績と飼料成分消化率
表3 ふんの中のリン濃度及びリン消化率
表4 発育成績及び血液成分

[その他]
研究課題名:豚における経済性と環境対策を両立した飼養管理技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:石田豊、湊和之、小材幸雄、今井泰四郎
発表論文等:湊、今井(2007) 群馬畜試研報、(14):31-36

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