モウソウチクサイレージ給与による鶏の免疫増強効果


[要約]
モウソウチクサイレージをブロイラーへ給与することにより、ブロイラーの液性免疫応答およびワクチンに対する抗体産生が増強される。また、腸内環境の改善により腸管免疫も増強される可能性がある。

[キーワード]ブロイラー、モウソウチク、サイレージ、液性免疫、免疫増強

[担当]静岡中小研セ・養鶏研究スタッフ
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
近年、全国各地においてモウソウチクを主とする放置竹林の増加が問題視されており、その有効利用が望まれている。モウソウチクには食物繊維が豊富に含まれ、またビタミンEなどの微量成分も多いことが知られている。粉末加工されたモウソウチクは乳酸発酵品質に優れ、これらには多数の乳酸菌が存在し、家畜に対する免疫力増強作用を持つと考えられる。そこで、本研究ではモウソウチクを粉末加工した後、発酵スターターとして乳酸球菌 Lactococcus lactis RO50株を添加して乳酸発酵させたもの(竹粉サイレージ)のブロイラーへの給与によるブロイラー免疫機能の増強作用について調査する。

[成果の内容・特徴]
チャンキー種(雌)を用い、市販飼料のみを給与する対照区と、対照区飼料に竹粉サイレージが2.5%含まれるよう調製した飼料を給与する竹粉区をそれぞれ20羽ずつ3群設定し、餌付けから出荷日(49日齢)まで飼養し、生産性、液性免疫増強効果、ワクチンに対する抗体産生能、腸内細菌叢について調査する。
1. 両区間において、出荷時体重、飼料要求率などの生産成績に差は認められない(表1)。
2. T細胞依存性液性免疫応答の指標としてヒツジ赤血球(SRBC)を、またT細胞非依存性液性免疫機能の指標としてブルセラメリテンシス死菌液(BM)を試験鶏に接種すると、SRBCの抗体価は、対照区と比較して竹粉区が上昇する傾向にある。さらにBMの抗体価では、対照区と比較して竹粉区が期間を通じて高値を示し、接種2週目以降は有意に上昇する(図1)。
3. 2週齢時においてニューカッスル病・伝染性気管支炎(ND・IB)混合生ワクチンを点眼接種すると、5週齢時および7週齢時におけるND抗体価は竹粉区で高値を示し、5週齢時で有意に上昇する(図2)。IB抗体価は7週齢時において上昇する傾向にある。
4. 竹粉区の腸内細菌叢では Staphylococcus が有意に減少し、また Streptococcus は減少傾向を示し、さらに Lactobacillus が増加する傾向にあるなど、腸内環境が改善される可能性がある(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. モウソウチクの有効利用により、放置竹林問題の解決の糸口となる可能性がある。
2. モウソウチクサイレージの利用により、抗病性に優れたブロイラー飼育が可能である。
3. モウソウチクサイレージの飼料添加量を2.5%より増やすと栄養的に乏しくなるため、生産性が低下する可能性がある。

[具体的データ]
表1 飼養成績
図1 BM抗体価  図2 ND抗体価
図3 腸内細菌叢

[その他]
研究課題名:モウソウチク由来の生理活性資材の開発とその応用に関する研究
予算区分:国庫
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:松井繁幸、中村茂和、関哲夫

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