1年生雑草が優占する耕作放棄地を対象としたソルガムの除草剤を使わない栽培法


[要約]
1年生雑草が優占する耕作放棄地において、ソルガム1番草の茎数を1m2当たりおおむね150〜200本確保する散播密植栽培を行うことにより、除草剤を使用しないソルガム栽培が可能である。

[キーワード]耕作放棄地、ソルガム、散播、密植、除草剤、雑草

[担当]長野県畜産試験場・飼料環境部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
食糧自給率の向上と輸入飼料価格高騰に対応し、また、将来のバイオエタノール原料生産も視野に置くと、耕作放棄地を活用したソルガムの生産が有効な対策の1つとして期待できる。しかし、耕作放棄地でのソルガム栽培にはいくつかの困難が予想され、なかでも雑草対策は重要であるが、生産コストや環境保全の観点から除草剤の使用はできるだけ避けたい。これまでに長野県の普通畑において、bmrの兼用型ソルガム「葉月」を使い播種量8kg/10aで散播密植し、1番草の茎数を200本/m2 程度確保して、雑草害を回避する除草剤を使わない栽培法が確立されている(平成12年および13年度成果情報)。また、長野県の耕作放棄地では、耕作地への復元が比較的容易と考えられるイネ科主体の1年生雑草優占の圃場が55%あり、耕作放棄年数が短いほどその割合が高い(図1、このうち45%の圃場は毎年、耕起または雑草の刈り払いがされている)。そこで本研究では、1年生雑草優占の耕作放棄地に対するこのソルガムの散播密植栽培法の有効性を実証する。

[成果の内容・特徴]
1. 試験場内の耕作放棄地に準じた条件において、bmrの兼用型ソルガム「葉月」を播種量8kg/10aで栽培すると1番草の茎数を200本/m2 程度確保でき、除草剤使用区と同等の収量が得られ、除草剤を使わない栽培が可能である(表1)。
2. bmrのスーダン型ソルガム「東山交31号」の散播密植栽培では、播種量を6〜7kg/10aとし、1番草の茎数を150本/m2程度確保することにより、除草剤を使わない栽培が可能である(表1図2)。
3. 10年以上にわたって耕作放棄された1年生雑草優占の現地耕作放棄地でも、ソルガム「葉月」の播種量8kg/10aの散播密植により除草剤を使わない栽培が可能である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 耕作地への復元が比較的容易な1年生雑草が優占する耕作放棄地に活用できる。5月下旬以降(平均気温15℃以上)の条件で栽培する。なお外来強害雑草優占ほ場は対象としない。
2. 散播密植栽培の手順は、①耕起(耕地が固く締まっている場合はプラウ耕を行ってからロータリー耕)、②施肥(慣行量)、③耕起、 ④播種(散粒機使用)、⑤覆土(ロータリーで表層撹拌、耕起深は3〜5cm程度とし、深くなりすぎないように注意)、⑥パッカー鎮圧。
3. ソルガムの倒伏を避けるため、1番草、2番草とも出穂期を目安に収穫する。
4. ソルガムの散播密植栽培での生産コストは乾物1kg当たり43円で、慣行(条播・除草剤使用)と同額である。作業労働時間は10a当たり7.6時間と、慣行に比べ1.9時間短い(「農業経営指標・平成18年度・長野県農政部」を参考にした)。

[具体的データ]
表1 除草剤の使用と播種量の違いがソルガムの生育と収量に及ぼす影響
図1 耕作放棄年数と主な優占雑草  図2 1番草収穫時における「東山交31号」の茎数と収量、雑草量の関係
表2 現地耕作放棄地における除草剤無使用条件下でのソルガムの生育と収量(2008年)

[その他]
研究課題名:1回刈りを前提としたソルガムの最大多収栽培法、耕作放棄地における栽培を想定した省力・低コスト栽培法の開発
予算区分:バイオマスプロ
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:矢口直輝、後藤和美、水流正裕

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