豚舎汚水から肥料となるリン(MAP)を回収


[要約]
汚水反応時間1時間、曝気強度45m3/m3・時、マグネシウム添加条件で簡易型MAP反応槽において豚舎汚水を反応させるとリン除去率は75%を示し、ステンレス製の網カゴに付着した投入リン量あたりの回収MAP量(回収効率)は0.61kg/kgである。

[キーワード]MAP、豚舎汚水、簡易型MAP反応槽、ステンレス製の網カゴ、回収効率

[担当]神奈川畜技セ・企画経営部
[代表連絡先]電話:046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
これまでの研究で、回分式活性汚泥浄化槽の運転方法を間欠運転にすることや、浄化処理水をバイオジオフィルターに通すことによって、処理水中の窒素及びリン濃度の低減化が可能である。しかし、有用資源であるリンや窒素の有効利用には至っていない。そこで畜舎汚水から水溶性のリンを不溶性の結晶として回収するリン結晶化法を、塩ビ管で作成した簡易な反応槽を用いて誘導する手法について検討する(図1)。

[成果の内容・特徴]
1. 汚水中の水溶性リン量に対してマグネシウム量が不足している場合には、フレーク状の工業用塩化マグネシウム(含有量98%以上)を0.5kg/リットルとなるよう水で溶解して塩化マグネシウム溶液(マグネシウム含有量5%)を作成し、汚水量に対して0.1%量添加することでリンの除去率が向上する。
2. 付着部材としてステンレス製の試験管立てを組み合わせて用いた従来法に比べ、ステンレス製の網カゴを重ねる方法により、MAPの回収量が10%向上する(表1)。
3. 付着部材の大きさ別によるMAP付着状況は、直径が小さく表面積が小さいカゴの方が回収総量及び単位面積当たりの回収量が多くなった。このことから、空気の通り道にあたる中心部に付着部材を配置することでMAP回収量が増加する(表2)。
4. 本装置の処理能力は、運転条件を汚水反応時間(HRT)1時間、曝気強度45m3/m3・時とし、前述1で調整した塩化マグネシウム溶液を汚水量に対して0.1%添加する。上記ステンレス製の網カゴを重ねた付着部材を用いた際、リン除去率は75%、投入リン量あたりの付着回収MAP量が0.61kg/kgで、純度98%のMAPが回収できる(図2)。 
5. 塩ビ管を用いた簡易型MAP反応槽は、設置面積を取らず、既存施設に導入が可能である。また、反応容積200リットルで日汚水量5m3の処理が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 塩ビ管で作成した簡易型MAP反応槽における処理能力値を示したことから、汚水の性状及び汚水量が把握できれば、MAP回収量が試算可能である。
2. 塩ビ管を用いた簡易型MAP反応槽でもリン結晶化反応を用いることで、リン肥料として利用できる高純度なMAPが回収できる。
3. 塩ビ管を用いた簡易型MAP反応槽は、低コストかつ設置面積を取らず、既存施設に導入が可能である。また、日汚水量に合わせて、容積及び曝気槽装置の選択が可能である。
4. 簡易型MAP反応槽における農家実証試験を実施中であり、既存施設への適用及びランニングコストなど検討中である。

[具体的データ]
図1 MAP反応槽及び消泡槽の概略図 表1 付着部材の違いによるMAP回収量の比較
表2 付着部材の大きさによるMAP付着状況
図2 付着部材に網カゴを組み合わせたMAP回収実験

[その他]
研究課題名:資源回収技術を活用した回分式浄化槽の検討
予算区分:高度化事業
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:川村英輔、田邊眞、鈴木一好(畜草研)、竹本稔1、上山紀美子1(神奈川県農技セ)

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