コーヒーかすの分解特性を利用したアンモニア脱臭法


[要約]
脱臭槽にコーヒーかすを利用してアンモニアを通気させると、吸着されたアンモニアの一部がコーヒーかすの分解に伴ってバイオマス窒素等に変換される。アンモニアの脱臭効果はオガクズに比べて高く、使用済みのコーヒーかすは肥料として利用できる。

[キーワード]アンモニア、生物脱臭、バイオマス窒素、コーヒーかす、有機性廃棄物

[担当]静岡畜研・環境飼料部
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
家畜ふん尿の堆肥化の際に発生するアンモニアを脱臭する従来の技術は、導入コストが高く、排水処理が必要な場合が多い。そこで、コーヒーかすが好気的条件下で分解する際に無機態窒素を再有機化する特性を生物脱臭に応用し、低コストで、脱臭槽充填物として使用したコーヒーかすを再資源化できる脱臭技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 容量14Lの脱臭槽に、乾物5%相当量の牛ふん堆肥を混合したコーヒーかす(含水率67%)を入れ、容器の下部からアンモニア濃度100mg/m3の空気を毎分2L通気し、脱臭槽を45℃に保持すると、35日間は脱臭能力が持続し、この期間のアンモニアの除去率は平均99.8%である(図1)。
2. コーヒーかすは脱臭槽内において分解し、35日間の乾物分解率は約30%で、容積は50%以上減少する(図2)。
3. 通気したアンモニアは、窒素換算で約90%がコーヒーかす中に保持され、塩化カリウム(KCl)可溶性窒素(無機態窒素を含む)として存在するほか、クロロホルム(CHCl3)可溶のバイオマス窒素、および難分解性の有機態窒素に変換される(図3)。なお、KCl可溶性窒素の増加は、バイオマスとして変換された窒素が、微生物の自己酸化により増加したものと推察される。
4. 使用済みのコーヒーかすは、堆肥原料として牛ふんと等量混合して堆積しても、吸収されたアンモニアが、再揮散することはない。また、使用済みコーヒーかすを直接土壌に施用してコマツナを栽培しても生育阻害は起きない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. コーヒーかすの入手が容易な地域で、おがくずに替わる脱臭資材として利用できる。
2. 分解により減じた量を生コーヒーかすで補えば、さらに長期間の脱臭が可能である。
3. コーヒーかすの含水率が60%以下になると脱臭能力が低下するので、脱臭槽の表面から加水する必要がある。
4. 脱臭能力は、コーヒーかす脱臭槽の温度が30℃でも、45℃の場合とほとんど変わらないが、コーヒーかす脱臭槽の温度が60℃になると脱臭能力が低下するので、高温の臭気は冷却してから通気する必要がある。

[具体的データ]
図1 コーヒーかす脱臭槽の脱臭効果  図2 コーヒーかす脱臭槽の分解特性
図3 コーヒーかす脱臭槽における窒素組成の変化
表1 使用済みコーヒーかすのコマツナに対する施用効果

[その他]
研究課題名:未利用有機物による生物脱臭槽の脱臭能力向上技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:佐藤克昭

目次へ戻る