ベンジルアデニンの複数回散布によるリンゴ2年生わい性台木苗木の育成技術
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[要約] |
わい性台木を用いたリンゴ2年生苗木を育成する際、1年生苗木に切り戻し、芽かき処理を行った後、1本に整理した新梢の先端部にベンジルアデニンを繰り返して散布する。苗木の主幹上にフェザー(羽毛状枝)が多発し、わい化栽培で利用しやすい2年生苗木が育成できる。 |
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[キーワード]苗木、フェザー、ベンジルアデニン、リンゴ、わい化栽培 |
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[担当]長野果樹試・栽培部
[代表連絡先]電話:026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
リンゴのわい化栽培の開園や改植では、フェザーのような、苗木の主軸に対して細く短めの側枝候補枝を多数有する2年生苗木の利用価値が高く、その基本的な育成技術は2001年度成果情報として公表している。本苗木育成法では、フェザー発生の促進、安定化を図るため、新梢先端部へのベンジルアデニン(以下、ビーエー液剤)の複数回散布の効果を明らかにする。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
1年間育成して、ほ場に植えたままの状態になっているM.9ナガノ台木を用いた1年生苗木に対し、発芽前までに接ぎ木部から約40 cm程度の高さで切り戻しを行う。展葉を過ぎた頃、頂端付近の旺盛な新梢を1本残して芽かきを行う(図1)。なお,苗木の栽植距離は列間100cm、樹間30cm以上は必要である。 |
2. |
1本に整理した新梢が20〜30cmに伸長した時期に先端部15cmまでの部分にビーエー液剤(60倍)を散布する(図1)。 |
3. |
その後、新梢の伸長に合わせて、毎回、新たに伸長した新梢先端部15cmまでの部分にのみ5回散布する(図2)。散布の間隔は概ね10日程度である。 |
4. |
以上により、2年生苗木の主幹上に、主軸に対して細く短いフェザーが多発する。ビーエー液剤の散布回数が多いほど、相対的に短めのフェザーが増え、総フェザー長が長くなる(表1)。また、主幹上の比較的高い位置まで連続してフェザーが発生し、わい化栽培向に適した苗木となる。 |
5. |
ふじ/M.9ナガノでは、本育苗法による苗木を用いて、定植翌年に平均1t/10a、同3年目に平均2.5 t/10a、同4年目に平均4.3 t/10aの粗収量が得られている(125 本/10a)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
小型のハンドスプレーを用いて、新梢先端から約15 cmまでの部分にビーエー液剤を1回散布するのに要する薬液の量(濃度調整済み)は、およそ3〜4ml程度である。 |
2. |
一度掘り上げた1本棒状の苗木を用い、定植した当年に本苗木育成技術を適用すると,移植に伴い根が傷むため十分なフェザーの発生が得られない事が多い。 |
3. |
育成2年目の苗木には添え木をして苗木主幹と主幹延長枝(1本残した新梢)を垂直に誘引する。 |
4. |
ビーエー液剤の散布回数が少ないと、側枝候補枝に利用できる枝の数が減り、主幹上にフェザーの発生のない部位ができることがある。 |
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![]() [具体的データ] |
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![]() [その他] |
研究課題名:リンゴわい化栽培向け優良大苗の生産・規格検定・流通技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:小野剛史、玉井浩、臼田彰、山西久夫、島津忠昭、小松正孝、伊藤正、飯島章彦
発表論文等:小野ら、園芸学研究、2005、4(2):165−170
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