50℃の温水点滴処理はニホンナシとリンゴの白紋羽病防除に有効である
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[要約] |
白紋羽病罹病樹を中心とした半径1mあるいは2m四方の範囲に50℃の温水を地表面から点滴することにより、ニホンナシ、リンゴの根部に寄生した白紋羽病菌が消失あるいは減少し、治療効果が得られる。 |
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[キーワード]白紋羽病、温水、点滴、治療、ニホンナシ、リンゴ |
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[担当]長野南信試・病害虫土壌肥料部
[代表連絡先]電話:0265-35-2240
[区分]関東東海北陸農業・果樹、関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
ニホンナシやリンゴなど果樹類の重要病害である白紋羽病に対しては、防除手段が乏しく十分な防除対策を講じることができない。現在普及している防除法は化学合成農薬を隔年で50〜200L/樹潅注するため環境負荷が懸念されている。そこで温水を用い、永年性作物に対して継続的に処理できる新たな防除技術を開発する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
温水点滴処理は次の手順により行う。
1) | 点滴チューブの配置:点滴チューブにはネタフィム社製ユニラム17 (ドリッパー間隔20cm、吐出量2.3L/時タイプ) を用い、処理樹を中心とした半径1mの範囲に螺旋状(図1左)あるいは2×2mの範囲に櫛状(図1右)に20cm間隔で設置する。点滴チューブ配置後は農業用マルチ等で被覆する。 |
2) | 温水の送水と地温の測定:熱水処理装置や家庭用小型ボイラーを用いて50℃の温水を送水する。送水中は点滴チューブの中間における地下10cmと30cmの地温を確認する。 |
3) | 処理終了の目安:地温が地下30cmで35℃を、あるいは地下10cmで45℃を超えた時点で送水を終了する。 |
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2. |
温水点滴処理は地温を35〜45℃に維持し、樹体へ影響を与えずに白紋羽病菌を殺菌する方法である。淡色黒ボク土(CL)、褐色森林土(LS、CL)では前述1の処理方法により、深さ30cmまでの地温を35〜45℃に20時間以上維持することができる(図2)。 |
3. |
ニホンナシ、リンゴともに処理樹では根部に寄生した白紋羽病菌が消失あるいは減少し、治療効果が得られる(表1)。ニホンナシでは処理後に細根の発根が旺盛となり、遅れて樹勢が回復する傾向がみられる。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
処理時期は地温の高い6〜10月が望ましい。褐色森林土(CL)でこの時期に点滴処理した場合、螺旋状配置で約4時間(1樹あたり水量800〜960L)、櫛状配置で約6時間(1樹あたり水量920〜1000L)を要する。 |
2. |
夏季の高温乾燥時に処理を行うと高温障害が発生する恐れがあるが、地下10cmの地温が45℃を超えた時点で処理を終了することにより高温障害を防止できる。 |
3. |
傾斜地では効果が劣る恐れがある。 |
4. |
地温上昇が不十分な地下深部や処理範囲外からの再感染が予想される。再発に注意を払い温水点滴処理の追加や他の防除手段を併用する。 |
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![]() [具体的データ] |
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![]() [その他] |
研究課題名:温水処理と微生物資材を併用した果樹類白紋羽病の治療法
予算区分:実用技術
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:江口直樹(長野南信試)、岩波靖彦(長野果試)、冨田恭範(茨城園研)、徳竹浩文(エムケー精工)、中村仁(果樹研)
発表論文等:Eguchi et al.(2008):J Gen Plant Pathol 74:382-389
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