「青島温州」の全面マルチ栽培における園地条件別の秋肥施用法


[要約]
「青島温州」の全面マルチ栽培では、マルチをあけて秋肥を施用しかん水することで葉中窒素を高く維持できる。マルチをあけることが困難な園地では、基準の施肥量を守ったうえで秋肥分を4月と5月に分施するか、収穫後速やかに施肥することで、収量や品質が安定する。

[キーワード]「青島温州」、マルチ栽培、秋肥、葉中窒素

[担当]静岡農林技研果樹研セ・生産環境、栽培システム
[代表連絡先]電話:054-334-4852
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
「青島温州」のマルチ栽培では、8月から収穫期の12月まで地表面を被覆するため、養分吸収抑制による樹勢低下が懸念されるとともに、11月の秋肥施用方法が問題になっている。そこで「青島温州」のマルチ栽培における秋肥の施用時期と量について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 「青島温州」の全面マルチ栽培において、秋肥を施用せずかん水もしない場合は、11月と12月中旬の葉中窒素が慣行栽培より低くなる。また、10月と秋肥施用後の11月に2回ずつかん水(10〜20mm/h降雨相当量)することで、葉中窒素は高くなり、慣行栽培と同程度となる(図1)。
2. 「青島温州」の全面マルチ栽培において、本来11月に施用する肥料を4月と5月に分施し、年間窒素施肥量30kg/10aを維持することで、10月の葉中窒素が適正域(2.8〜3.3%)となり、翌年3月の春肥前も高い値を維持できる(図2)。また、隔年結果の程度はマルチ撤去後施用する栽培方法より軽度で、積算収量も多い(図3)。
3. 施肥時期が同じ場合は、年間窒素施肥量が5kg少ない25kg/10aで葉中窒素は低く、隔年結果の程度はやや大きい(図2)。
4. 施肥時期・量が異なっても、果実品質(果重、比重、果皮率、糖度、酸含量)に及ぼす影響は小さく、統計的な差は認められない(データ省略)。
5. 園地条件によって秋肥施用およびかん水の対応を考慮できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. ここで示した秋肥施用方法は通常の生育状況を想定しており、熟期の前進で浮き皮等果実品質の低下が懸念される場合には、収穫後までかん水を控える。

[具体的データ]

図1 秋期のかん水や秋肥の有無が葉中窒素に及ぼす影響  図2 全面マルチ栽培における秋肥の施用時期・量の違いと時期別の葉中窒素
図3 全面マルチ栽培における秋肥施用時期の違いと積算収量  表1 「青島温州」マルチ栽培における園地条件別の秋肥施用方法

[その他]
研究課題名:人と環境に優しいマルチ栽培の肥培管理技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:中村明弘、吉川公規、竹川幸子、江本勇治、佐々木俊之

目次へ戻る