セイヨウナシ「ル レクチエ」の果実外観不良症状の分類と評価用チャートの開発


[要約]
「ル レクチエ」で問題となっている果実の外観不良症状を分類し、呼称を統一して、典型的な症例と対策をまとめた「果実外観評価チャート」を作成した。

[キーワード]セイヨウナシ、ル レクチエ、写真、果実、外観不良、チャート

[担当]新潟農総研園研セ・育種科、栽培・施設科
[代表連絡先]電話:0254-27-5555
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
セイヨウナシ「ル レクチエ」は、果皮に汚損等を生じやすく、外観不良による商品性低下が問題となっている。外観不良症状は多様で、呼称も統一されていないために十分な診断や対策が実施できなかった。そこで、外観不良症状を分類し、原因を明らかにして、利用しやすい指標を作成し、症状に応じた対策の実施と商品性の向上を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 外観不良症状の分類と呼称の統一
 症状の違いにより外観不良を12種類に分類した。症状の類似性や発生程度の相関分析や栽培管理との関連性から9症状を発生要因別に以下のようにグルーピングし、呼称を定めた。
(1)生理障害:「ハードエンド」、「ブラックエンド」、「ゆず肌」(表1
(2)下向き花芽への着果や袋掛け不良による袋内の過湿が関連する症状:「斑点状汚損」、「面状汚損」、「放射状薬斑」(表1図1
(3)薬剤散布の影響:「リング状薬斑」、「放射状薬斑」、「面状汚損」(表1
(4)上向き花芽への着果(表2)や袋掛けの時期(データ略)が影響する症状:「外傷痕」、「果点荒れ」
2. 「果実外観評価チャート」の開発
 日焼けを除く11症状について、追熟前と追熟後の典型的な症例の画像を選定し、A4サイズ6枚に配置した診断用のチャートを作成した。裏面に症状のグルーピングや既往の知見をもとに「症状の特徴」、「原因および多発する条件」、「対策」を記した(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 実際の果実と画像を照らし合わせることで、農家個人でも正確な診断ができ、対策を知ることができる。
2. 「果実外観評価チャート」は新潟大学農業情報工学研究室との共同開発である。
3. 「果実外観評価チャート」は新潟県果樹振興協会(TEL025-285-5511内2943)を通じて有償配布している(2,000円、数量限定)。

[具体的データ]
表1 外観不良症状間の相関分析結果から認められた傾向(2005〜2007年)
表2 着果する花芽の向きと有意な相関を示す外観不良症状(2006年)  図1 下向き花芽への果実袋のかけ方と汚損の発生程度
図2 「ルレクチエ」果実外観評価チャート(6枚組のうちの1枚、表面、裏面)

[その他]
研究課題名:北陸の気象・重粘土壌条件下での高商品性省力果樹栽培技術の開発
予算区分:先端技術を活用した農林水産研究高度化事業(北陸地方領域)
研究期間:2005〜2009年度
研究担当者:松本辰也、本永尚彦、根津潔、元永佳孝(新潟大)

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