気候温暖化によるブドウ「デラウエア」の生育ステージの変動予測


[要約]
発育速度モデルを利用することでブドウ「デラウエア」の生育ステージの推定が可能である。発育速度モデルを将来の気候温暖化を想定した高温環境に適用すると、ブドウ「デラウエア」の生育ステージは顕著に前進することが予想される。

[キーワード]気候温暖化、ブドウ、デラウエア、発育速度モデル、生育予測

[担当]山梨果樹試・栽培部
[代表連絡先]電話:0553-22-1921
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
温暖化による気候変動が問題になる中、果樹産地においても温暖化の影響を予測し、早期に対策を講じる必要がある。そこで、気温をパラメーターとした発育速度モデルを作成することで、高温環境がブドウの生育ステージに及ぼす影響をシミュレーションし、気候温暖化の影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「対話型ノンパラメトリックDVR法プログラム(農研機構職務作成プログラムP第7672号-1)」を用い、日最高気温をパラメーターにした発育速度モデルにより、ブドウ「デラウエア」の生育ステージの推定が可能である(図1表1)。
2. 得られた発育速度モデルは、気温に対してほぼ直線的に発育速度が増加するモデルである(図1)。
3. この発育速度モデルに、甲府地方気象台の観測記録をもとにした2030年の予測気温(表2)をあてはめ、将来の生育ステージをシミュレーションすると、冬期の温度上昇にともなって、自発休眠の覚醒は遅れるが、その後の高温環境によって展葉日以降の生育ステージは前進する(図2)。
4. さらに気温の上昇が著しくなると、この傾向は顕著になる(図2)。
5. 以上のことから、ブドウ「デラウエア」は、年ごとの気象の変化によって、大きく生育ステージが変動すると考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 特定の地域、品種によって作成されたモデルであること、将来の温度は他に発表されている予測情報などを考慮していないため、モデルケースとして利用する。
2. すべての日が平年より高温で推移した場合を想定した推定結果である。冬期の低温によって自発休眠覚醒が早まる場合などは、さらに生育が前進することも考えられる。
3. 同様の手法を用いることで、他の地域、品種でも生育ステージの推定が可能である。

[具体的データ]
DVR法により作成したブドウ「デラウエア」の発育速度モデル
表1 DVR法によるブドウ「デラウエア」の生育ステージの推定結果
表2 過去40年の気温上昇から算出した2030年の月別気温上昇値
      図2 発育速度モデルによるブドウ「デラウエア」の生育シミュレーション

[その他]
研究課題名:温暖化による気象変動が果樹の生育・成熟に及ぼす影響予測
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:齊藤典義、萩原栄揮、富田晃、村上芳照、宇土幸伸、猪股雅人
発表論文等:齊藤ら、日本農業気象学会2008年度全国大会

目次へ戻る