ヒートポンプ・ハイブリッド暖房方式によるハウスミカンのコスト削減効果


[要約]
三重被覆した早期加温ハウスミカン栽培において、10馬力のヒートポンプを2台導入しハイブリッド運転することで、重油暖房のみと比較して重油は67.5%削減される。重油単価105円で、電気料金を含めて試算すると暖房コストは43.1%削減される。

[キーワード]ハウスミカン、空気熱源式ヒートポンプ、ハイブリッド運転、省エネ

[担当]愛知農総試・園芸研究部・常緑果樹グループ
[代表連絡先]電話:0533-68-3381
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
A重油価格は2008年8月に122円まで高騰した。ハウスミカンは、他作物に比べ経費に占める燃料費の割合が高いので重油価格高騰の影響が大きく、効率的な省エネ技術開発の要望が強い。そこで、発熱効率の高い空気熱源式ヒートポンプ冷暖房機を既設の重油暖房機とハイブリッド運転させた場合の実用性を評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 10馬力のヒートポンプを10a当たり2台導入し、既設の重油暖房機と連動運転させる。温度管理は、ヒートポンプと重油暖房機を1台のコントローラーで制御し、暖房費が安いヒートポンプを優先的に稼働し、ヒートポンプの暖房能力だけでは設定温度まで上昇しないときに重油暖房機を稼働する。
2. 夜間外気温が5℃前後と低い場合は、重油暖房機の稼働時間が長くなり、コスト削減効果が低い。逆に、外気温平均が10℃以上と高い場合は、設定温度が24℃以上と高くてもコスト削減効果が高い(表1)。
3. 11月20日加温、面積10aの三重被覆(外張:PO、内張:PO+農ビ)のハウスに10馬力のヒートポンプを2台導入した場合、重油暖房のみと比較して、重油削減率は67.5%となる。電気料金は基本料金増額分と従量料金を合わせて約47万円要するが、重油単価105円で試算した暖房コストの削減率は43.1%となる(表2)。
4. 重油単価と暖房コストは、電気料金が一定の場合、重油単価が高いほどヒートポンプ導入の有無によるコスト差額が大きくなり、コスト削減率が高くなる(表3)。
5. 導入による暖房コストの差額と1年当たりの初期費用とが合致する重油単価の採算分岐点については、耐用年数が5年では80円台、10年では60円台となる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. ヒートポンプの風量は重油暖房機に比べ小さいので、ヒートポンプの稼動割合が大きい場合は温度ムラが生じやすく、循環扇設置等による対策が必要である。
2. ヒートポンプ導入後も重油暖房のみと同様の温度管理が可能で、収量や果実品質への影響はみられない。
3. ヒートポンプは、外気温が5℃以下で湿度が60%以上の場合、霜とり運転を行うため一時的に暖房効率が低下する。冬季の気温が低い園地ではコスト削減率が低くなるので、事前の経営試算を十分に行う等の注意が必要である。

[具体的データ]
表1 ヒートポンプ稼働・非稼働設定により算出したコスト削減率
表2  ヒートポンプ導入による重油および暖房コストの削減率
表3 ヒートポンプ導入による暖房コスト削減効果の試算

[その他]
研究課題名:東海地域における原油価格高騰対応施設園芸技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:本美善央、兼子欣也(愛知経済連)、原 広志(愛知経済連)
発表論文等: 東海農政局/施設園芸における原油価格高騰対応の最新の研究成果
http://www.maff.go.jp/tokai/seisan/engei/gennyu/kenkyu/s6.pdf

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