ニホンナシの根域制限栽培における高糖度果実安定生産のための養水分管理


[要約]
「幸水」の高うね式根域制限養液土耕栽培において、満開後81日以降の低日射条件下でも高糖度果実を生産するための養水分管理法は、4月から満開後80日までは毎日養液を供給するが、満開後81日から収穫完了までは毎日40L/樹灌水のみを行う。

[キーワード]ニホンナシ、根域制限、養液土耕、養水分管理、高糖度

[担当]石川農総研・育種栽培研究部・園芸栽培グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ニホンナシの果実の糖度は天候に左右されやすく、その向上と安定は大きな課題となっている。そこで、高うね式根域制限養液土耕栽培において、高糖度果実を安定的に生産するための養水分管理法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. ニホンナシの高うね式根域制限養液土耕栽培は、遮根シートの上に堆肥等で土壌改良した用土を高うね状に載せて樹を植栽し、高うねの上には液肥混入器を接続した点滴灌水チューブを配置して、灌水と施肥を同時に行うものである(図1図2)。
2. 4月から満開後80日までは毎日養液を供給するが、満開後81日から収穫完了までは毎日灌水のみを40L/樹行うことにより、通常の日射条件下では、糖度が養液を与えた果実よりも高く、慣行と同等の13度を超える果実が生産できる。また、満開後81日以降の日射量が少ない条件下でも、慣行栽培よりも糖度の高い果実を生産できる(図3)。
3. 満開後81日から収穫完了まで灌水のみを行う養水分管理による、糖度以外の果実品質、新梢生育への影響はみられない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 慣行栽培で果実糖度が不足して問題となる果実肥大期後半の寡日照条件下においても、安定して高い糖度の果実を生産できる。
2. 本試験の遮光処理での満開後81日から120日(収穫始)までの積算日射量は、果実糖度が不足して問題となった2003年の日射量558MJ/m2を下回っている。

[具体的データ]
図1 高うね式根域制限の構造  図2 点滴灌水チューブの配置
図3 遮光処理と養水分管理が果実糖度に及ぼす影響(2007年)  試験区の概要
表1 遮光処理と養水分管理が果実品質および新梢生育に及ぼす影響(2007年)

[その他]
研究課題名:重粘土質土壌等の水田転換畑に適した高商品性果実生産技術の開発
予算区分:先端技術を活用した農林水産研究高度化事業
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:松田賢一、山内大輔、井須博史、木下一男、中野眞一

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