暗黒下での低温処理によるプリムラ・ポリアンサの開花促進技術
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[要約] |
プリムラ・ポリアンサの苗を、8月に0℃・30日間暗黒条件で低温処理を行えば、夏場の高温を回避し品質を損ねることなく2ヶ月ほど開花を促進させることが可能である。 |
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[キーワード]プリムラ・ポリアンサ、促成栽培、暗黒低温処理、鉢花、花壇苗 |
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[担当]埼玉農総研・園芸研・野菜花担当
[代表連絡先]電話:0480-21-1113
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
埼玉県は全国第1位のプリムラ類の生産量を有し、早期出荷と高品質生産のため夏場に栃木県日光市の戦場ヶ原等で高冷地育苗を行っている。本研究では、平地で夏場の高温を回避し開花を促進させるための低温庫を利用した暗黒条件での低温処理方法を確立する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
プリムラ・ポリアンサ「セブンティー・ブライトピンク」を用い、0,5および10℃で、8月17日から15日間および8月2日から30日間、暗黒条件の低温処理を行うと、処理温度が高く処理期間が長いほど開花が促進される(図1)。 |
2. |
30日間の低温処理中に、既に花芽分化を開始している。低温処理を終了した時に0℃の場合ほう葉形成期にあるのに対し、10℃の場合花弁形成期に達している(表1)。 |
3. |
低温処理温度が高い程葉幅は狭くなって葉色は黄化し、10℃で30日間の低温処理を行うと葉が徒長し著しく不良な草姿で開花する(表2、図2)。 |
4. |
低温処理期間が長いほど、夏場の栽培で問題となる葉やけによる品質低下が減少し、0℃の場合草姿を損なうことなく30日間の低温処理が可能で、8月2日から0℃で30日間の低温処理は2ヶ月ほど開花を早め夏場の高温を回避する上で有効である。 |
5. |
7月2日から低温処理(0および10℃で30日間)を行った場合開花は早まるものの、開花の早まったほとんどの個体の花に変異が生じる(データ省略)。 |
6. |
早生品種「ポニーピンクシェード」の場合開花は早まらないものの、8月2日からの0℃・30日間の低温処理は奇形花の発生や葉やけを防ぎ、夏場の高温回避により品質を高める上で有効である(データ省略)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
低温処理はコンテナを用い全体をビニールで被覆して、あるいは被覆なしで段ボール箱を用いて行い、処理中の湿度を維持する。暗黒条件で低温処理を行うため、球根の冷蔵処理等に使う一般的な低温庫を用い、コンテナや段ボール箱を積み上げ効率的にスペースを利用できる。低温処理後に90%の寒冷紗を用い、遮光して3日間ほど順化する。 |
2. |
7月の低温処理結果から、処理後の気温(8月上旬の平均気温28.6℃)が花の変異発生に及ぼす影響が考えられるため、低温処理を行う時期に注意する。 |
3. |
低温処理の開花促進効果は「セブンティー・ブライトピンク」等数種の中〜晩生品種について得られた結果であり、他の品種に対して適応する際に確認が必要である。 |
4. |
高冷地育苗にかえて低温庫により低温処理を行う場合、高冷地への輸送や夏場の栽培管理がなく、既存施設の低温庫を借りて利用した場合でも夏場の生産費用は45%程削減する。 |
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![]() [具体的データ] |
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![]() [その他] |
研究課題名:鉢花・花壇苗の山上げ栽培に替わる新しい平地早出し技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2005〜2008年度
研究担当者:石川貴之
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