加圧脱水処理法で製造された浄水ケーキのイチゴ育苗培養土への利用


[要約]
加圧脱水処理法で製造された浄水ケーキ(加圧脱水式乾燥土)をイチゴの育苗培養土として利用する場合、市販の園芸用培養土を25%(v/v)混合すれば従来の浄水ケーキ(造粒脱水処理物)と同等に利用できる。

[キーワード]イチゴ、産業廃棄物利用、浄水ケーキ、加圧脱水式乾燥土、育苗培養土

[担当]神奈川農技セ・野菜作物研究部・野菜担当
[代表連絡先]電話:0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
浄水場から産出される浄水ケーキは産業廃棄物であるが、これまで凝集剤処理法により製造される造粒脱水処理物がイチゴの育苗培養土として広く用いられてきた。しかし、製造工程の違う加圧脱水処理法で産出される加圧脱水式乾燥土は特性が異なるため、生産現場で生育不良等の問題が生じている。そこで、加圧脱水式乾燥土をイチゴの育苗培養土として安定して利用する技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 浄水ケーキに含まれる交換性マンガン(Mn)は、かん水処理により、造粒脱水処理物では顕著に減少するが、加圧脱水式乾燥土では減少しにくい(表1)。
2. 加圧脱水式乾燥土に市販の園芸用培養土を6.3〜25%(v/v)混合してイチゴの育苗培養土とした場合、25%(v/v)混合では生理障害もみられず正常に生育する。12.5%(v/v)混合では生育は良いが葉脈間に黒色小斑点を生じ、6.3%(v/v)混合では葉脈間が褐変して生育が不良となる(図1表2)。
3. 加圧脱水式乾燥土に市販の園芸用培養土を25%(v/v)混合して育苗した場合、イチゴの開花時期や収量に造粒脱水処理物との差は認められない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 市販の園芸用培養土は与作V1号を用いた。
2. 加圧脱水式乾燥土は、かん水処理の有無に関わらず交換性Mnが減少しにくくMn過剰症に類似した生理障害が発生しやすいので、必ず市販の園芸用培養土を混合する。
3. 加圧脱水式乾燥土をイチゴの育苗培養土として使用する場合には、造粒脱水処理物と同じく、1年間程度降雨にさらすか、1年間の降水量に相当するかん水処理を行う。
4. 凝集剤処理法により製造された造粒脱水処理物は、「さがみ粒土」の名称で流通している。
5. この成果は「さちのか」以外に「とちおとめ」及び「章姫」にも適用できる。「とちおとめ」と「章姫」は「さちのか」に比べて生理障害が発生しにくい。

[具体的データ]
表1 各浄水ケーキのかん水処理前後の化学性
図1 加圧脱水乾燥土に対する市販園芸用培養土の混合割合がイチゴ苗の生育に与える影響
表2 加圧脱水式乾燥土で育苗したときにみられた葉の生理障害
表3 各浄水ケーキで育苗したときの開花開始期、収穫開始日及び収量

[その他]
研究課題名:主要野菜の高品質安定生産技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:太田和宏、北浦健生、伊藤喜誠

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