品質の優れるジュース用新品種候補「トマト桔梗交44号」


[要約]
「トマト桔梗交44号」はリコペン含量、糖度が安定して高く、色調にも優れる。また大果で、心止まり性およびジョイントレス果柄を有し、高品質ジュース用原料生産のための無支柱栽培に適する。

[キーワード]トマト、糖度、リコペン含量、多収性、ジョイントレス果柄

[担当]長野中信農試・畑作育種部
[代表連絡先]電話:0263-52-1148
[区分]野菜茶業・野菜育種、関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
トマトジュースの農林規格(JAS)が平成17年に一部改正され、リコペン含量が7mg%以上、糖度(Brix)が4.5%以上という基準が新たに追加された。このため、栽培条件によっては、一部の既存品種はこの基準を満たさない可能性がある。リコペン含量の高いジュ−ス用品種「リコボ−ル(桔梗交40号)」(平成20年4月品種登録出願受理公表)がリコペン補填原料として期待されているが、補填用ではなく単一でもジュース用原料として利用できる品種も求められている。そのため糖度、リコペン含量が安定して高く、色調の良いことを目標に高品質のジュース用品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「トマト桔梗交44号」は次の2系統の単交雑により育成された一代雑種である。種子親には、「NDM051」と「93PLS」との交雑後代である「PLS6-3-3-2」に「NDM444」を平成10年に交配し、その交雑後代から選抜した「00C-40-4-m-5-4」を用いる。花粉親には、「NDM929」の自殖系統から選抜した「96A-24-2-1-m-6」を用いる(図1)。
2. 「トマト桔梗交44号」は心止まり性で、開張度がやや大きい。倒伏前の草型は中間で、果柄に離層のないジョイントレス果柄及びog遺伝子(鮮赤色果色遺伝子)を有する。早晩性は中晩生である(表1図2)。
3. 「トマト桔梗交44号」の果実は100g程度の大果で手取り収穫に適する。果形はやや扁平形で硬い。収量性は「しょうほう」と同等に優れる。前期収穫率はやや低い(表1図2)。
4. 「トマト桔梗交44号」のリコペン含量は高リコペン品種「リコボ−ル」よりやや低いが「しょうほう」、「KGM993」より高い。糖度は5.6と最も高く、酸度はやや低く、ジュースの色調(a*/b*)が優れている(表2)。
5. 萎凋病レース1及び半身萎凋病レース1に抵抗性である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 品質が優れトマトジュース原料に適する。
2. 中部地方以北の冷涼な地域における露地無支柱栽培に適する。
3. 前期収量を確保するため、着果ホルモン剤を使用するなどして、初期の着果安定を図る。

[具体的データ]
図1 ジュース用トマト桔梗交44号の育成系統図
表1 「トマト桔梗交44号」の植物体及び収量特性1(2006〜2008年の平均)
表2 「トマト桔梗交44号」の果実特性及び耐病性(2006〜2008年の平均)
図2 「トマト桔梗交44号」の着果状況と(左)と果実外観(右)

[その他]
研究課題名:無支柱栽培用品種の育成
予算区分:指定試験、県単
研究期間:1994〜2008年度
研究担当者:岡本潔、丸山秀幸、松永啓、矢ノ口幸夫、村山敏

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