トートリルア剤の設置本数が交信攪乱効果に及ぼす影響


[要約]
ハマキガ類の交信攪乱剤(トートリルア剤)の150本/10a設置では、250本/10aに比べて主要成分のZ11-TDAの気中濃度は薄くなり、交信攪乱効果もやや不安定である。

[キーワード]チャ、チャハマキ、チャノコカクモンハマキ、トートリルア剤、交信攪乱

[担当]静岡農技研(茶研セ)・生産環境(病害虫)
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ハマキガ類の交信攪乱剤(トートリルア剤)は、通常250本/10aの設置本数が推奨されている。しかし、本剤の導入経費の削減をすすめるためには、登録範囲の下限である150本/10aの実用性を比較・検証する必要がある。そこで、250本/10aと150本/10a設置の実用性を大面積の現地ほ場で比較する。また、150本/10aにおいて一番茶摘採後の中切り更新後に再設置した場合の交信攪乱効果についても検討する。

[成果の内容・特徴]
1. チャハマキのモニタートラップによる誘引阻害率は、250本/10a区ではすべての年次、世代で95%を上回るが、150本/10a区では第2世代(2006年)または第3世代(2008年)で95%を下回る場合がある(表1)。
2. チャノコカクモンハマキのモニタートラップによる誘引阻害率は、250本/10a区ではすべての年次、世代で95%を上回るが、150本/10a区では第2世代(2006年)または第3世代(2006年、2008年)で95%を下回る場合がある(表1)。
3. 150本/10a区において、一番茶摘採後の中切り更新により先に設置したディスペンサーが無効となってしまう場合、更新後にディスペンサーを再設置するとチャハマキ、チャノコカクモンハマキともに最終世代まで95%以上の誘引阻害率を維持する(表1)。
4. 主要なフェロモン成分(Z11-TDA)の気中濃度は、6月上旬および8月上旬の測定では、ともに150本/10a区は250本/10a区より有意に低い(p<0.01)(図1)。また、茶園内の端と中央部では、フェロモンの濃度に差は認められない(p>0.05)(図1)。
5. チャハマキとチャノコカクモンハマキの幼虫密度は年次や世代によって大きく変動し、150本/10a区、250本/10a区、および慣行防除区間では、有意な差は認められない(p>0.05)(表2)。なお、幼虫密度は、薬剤防除の影響が大きいと考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 交信攪乱剤のディスペンサーの設置は、越冬世代成虫発生前の3月である。
2. 150本/10a処理では、夏期以降に交信攪乱効果が低下し、密度抑制効果が持続しなくなる恐れがあるので、大面積でかつ虫の密度が比較的低い場合に実施する。
3. さらに、密度が高くなりやすい夏期の第3世代幼虫に対しては、薬剤防除を組み入れることも考慮する。

[具体的データ]
表1 モニタートラップによる誘引阻害率%
図1 150本/10a区と250本/10a区におけるZ 11-T D A の気中濃度
表2 2種ハマキガの幼虫密度(頭数/u)

[その他]
研究課題名:茶害虫クワシロカイガラムシの環境保全型防除技術の実用化
予算区分:委託プロ(生物機能)
研究期間:2002〜2008年度
研究担当者::小澤朗人

目次へ戻る