チャ挿し穂への炭素イオンビーム照射効果及び照射材料の違いによる影響


[要約]
チャ挿し穂への炭素イオンビーム照射は、異なる採取時期でも14Gyで挿し木後の生存率が著しく低下する。14Gyにおいて、挿し穂の木化率が50、100%では生存率40%だが、木化率0%では10%に低下する。14Gyで新梢は木化率にかかわらず生育阻害される。

[キーワード]チャ、重イオンビーム、挿し穂、挿し木、突然変異、木化率、生存率、新梢長

[担当]静岡農技研(茶研セ)・新商品開発(育種)
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
近年 γ 線などとは異なる生物効果を示すとされる重イオンビームを用いて、既存品種の優良性を維持しつつ部分的な改良が期待できる突然変異育種法の育種素材の開発を目指している。しかし、チャ挿し穂への重イオンビームの照射例は少ないため、照射線量と挿し穂の採取時期、木化率が挿し木後の生存率、生育に及ぼす影響を調査する。

[成果の内容・特徴]
1. 1. 挿し穂(品種「やぶきた」)に2〜14Gy(Gyは吸収線量)の炭素イオンビーム(照射場所は理化学研究所、LET(線エネルギー付与)は23keV/μm)を照射後挿し木すると、線量の増加に従い、生存率が低下する。特に14Gyでは異なる採取時期でも無照射に比べて生存率が40%を下回る(図1)。
2. 2. 木化率が異なる挿し穂への炭素イオンビーム照射は、いずれの木化率も2〜10Gyでは挿し木後の生存率が60%以上である。14Gyでは、木化率50、100%で40%程度であるが、木化率0%では10%に著しく低下する(図2)。
3. 3. 挿し穂の木化率にかかわらず、10Gyでは新梢の生育が遅れ、14Gyでは生育が阻害される(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 1. 他の核種やLETでは、生存率及び生育への影響が異なることに留意する。

[具体的データ]
図1 チャ挿し穂への照射線量及び採取時期が挿し木苗の生存率に及ぼす影響  図2 木化率の異なるチャ挿し穂への照射線量の違いが挿し木苗の生存率に及ぼす影響
図3 木化率の異なる挿し穂への照射線量の違いが挿し木苗の新梢に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:重イオンビームを活用したチャの有用形質系統の開発研究
予算区分:国庫・放射線事業
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:齋藤武範、風間裕介(理研)、林依子(理研)、阿部知子(理研)

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