チャを加害するマダラカサハラハムシの産卵生態


[要約]
チャを加害するマダラカサハラハムシ成虫の産卵数は25℃で最も多く、約350個/雌である。卵の発育零点は10.1℃、有効積算温度は159.4日度である。チャを加害する個体群は茶園内に産卵する。

[キーワード]チャ、マダラカサハラハムシ、産卵数、卵塊

[担当]静岡農技研(茶研セ)・生産環境(病害虫)
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
マダラカサハラハムシ成虫による茶の被害が一部地域で常発している。本種は茶園以外では雑木林に生息し、生態については断片的な記録があるが、詳細な繁殖生態については不明な点が多く、茶園から卵や幼虫、蛹はこれまで見つかっていない。そこで、茶園から採集した本種にチャを餌として与えた場合の産卵特性および茶園内における産卵の有無および産卵場所について明らかにし、防除対策を確立するための基礎資料とする。

[成果の内容・特徴]
1. 4箇所の茶園で採集された成虫は全て雌であり(表1)、茶園で発生する個体群は産雌単為生殖である可能性が高い。
2. 室内飼育による産卵数は15〜35℃の5段階の中では25℃で最も多く、平均347.9個で、最大812個、25℃における平均生存期間は94.3日、最長175日である(図1)。
3. 卵は黄色楕円形の長径0.7mmで、成虫は卵塊に粘着物質を塗りつけ、隣接する物体同士を接着し、糞で卵塊の周囲を囲い込む(図2)。
4. 卵の発育零点は10.1℃、有効積算温度は159.4日度である。20℃のふ化率が最も高く、平均75.4%である。35℃ではふ化しない(データ省略)。
5. 茶園では、髪の毛病などで樹冠下の枝幹に留まっている落葉の方が、地表面に堆積している落葉よりも早期にふ化幼虫が確認できることから、本種は、主に樹冠下の落葉等に産卵すると推定される(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 雑木林の本種の性比については、1982〜1983年に兵庫県と岐阜県で採集された個体の記録があり、全て雌である(Isono 1988)。
2. 産卵数調査に供した個体は、成虫発生初期に野外から採集した。そのため、既に産卵していた個体が含まれている可能性がある。

[具体的データ]
表1 マダラカサハラハムシの雌雄比率
図2 マダラカサハラハムシの卵塊 図1 各温度における成虫の生存曲線と個体あたりの産卵数推移

図3 ツルグレンにより採集されたふ化幼虫数の推移

[その他]
研究課題名:チャ害虫マダラカサハラハムシの発生生態の解明
予算区分:国庫・食の安全安心
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:吉崎真紀、小澤朗人

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