青果用カンショ「べにまさり」の外観品質向上栽培法


[要約]
「べにまさり」は、土壌診断により圃場を選定し、窒素施肥量0.1kg/a、カリ施肥量1〜2kg/a、畝間90cm、株間25cm、5月中旬〜6月中旬挿苗、4節植えを組合せて栽培することにより、丸品、曲がりやくびれ等の障害いもの発生が少なく、A品率が向上する。

[キーワード]青果用カンショ、べにまさり、A品、丸品、障害いも

[担当]茨城農総セ・農研・環境・土壌研究室、作物研究室
[代表連絡先]電話:029-239-7210
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
青果用カンショ「べにまさり」は粘質な肉質で「ベニアズマ」とは異なる食味を持ち、焼き芋としての需要が高まっている。このため茨城県では年々作付けが増加している。しかし、圃場によっては丸品や障害いもが発生し、外観品質の低下がみられる。そこで、外観品質向上のための「べにまさり」栽培法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 現地(行方市)において調査した結果、A品率と丸品率には高い負の相関が見られる。また、丸品率が高い圃場は、作付前土壌の可給態リン酸、交換性カリ、交換性石灰含量が多い傾向が認められる(図1)。このため、A品率を高めるには各分析項目が著しく高くない圃場を選定する。
2. 窒素施肥量が多くなると収量が増加するが、いもの外観品質は低下する。丸品や障害いもの発生を少なくし、A品率を高めるには窒素施肥量を0.1kg/aとする(表1)。
3. カリ施肥量が多くなると収量は増加傾向であるが、丸品または障害いもの発生が多くなる。A品率を高めるにはカリ施肥量は1〜2kg/aとする(表1)。
4. 畝間、株間の違いによる収量差は判然としないものの、広くなると丸品あるいは障害いもの発生が多くなり、A品率は低下する。そのため栽植密度は畝間90cm、株間25cm程度の密植とする(表1)。
5. 5月中旬〜6月中旬までの挿苗は収量に差はほとんどみられない。しかし、6月30日以降の挿苗では収量は低下し、さらに皮脈、曲がり等の障害いもが増加する。このことから、挿苗は6月中旬までとする(表2)。
6. 土壌化学性による圃場の選定、窒素およびカリ施肥量、栽植密度、挿苗期、4節植えを組合せて現地実証試験をした結果、丸品、曲がりおよびくびれ等の障害いもの発生が少なくなり、A品率と粗収益が向上した(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 4節植えについては、2005年度成果情報「カンショ「べにまさり」のいも肥大制御技術」を参考にする。
2. 在圃日数が長いと丸品率が高くなるため、在圃日数は120〜140日程度とする。
3. 作付け圃場の土壌化学性は可給態リン酸10〜30mg、交換性カリ20〜50mg、交換性石灰240〜350mg(茨城県「土壌の改善基準」)を参考にする。

[具体的データ]
図1 丸品率とA品率の関係および丸品率と土壌化学性の関係(2005〜2007)
 表1 試験区別の収量、外観品質
 表2 挿苗期別の収量、外観品質(2006)
表3 品質向上技術の組合せによる収量、外観品質(2007、行方市現地圃場)

[その他]
研究課題名:ブランドづくりのためのかんしょ「べにまさり」の栽培特性の解明と栽培法の確立
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:折本美緒、樫村英一、大越三登志、鈴木正明、塚本心一郎

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