栽培特性や製麺適性に優れる小麦「きぬの波」の推奨品種採用


[要約]
「きぬの波」は早生、多収で耐倒伏性が高く、外観品質、製麺適性、食味に優れるため、奨励(推奨)品種に採用する。

[キーワード]きぬの波、小麦、奨励品種、栽培特性、製麺適性

[担当]山梨総農セ・栽培部・作物特作科
[代表連絡先]電話:0551-28-2916
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
山梨県の小麦の奨励品種は「農林26号」であるが、収量性が低く、稈長が長いため倒伏し易い。また、製麺適性も実需者の要望に十分応えているとはいえない。
 そこで、多収で耐倒伏に優れ、良質で製麺適性の高い「きぬの波」を推奨品種として採用することで、小麦作の生産安定と品質向上を図る。

[成果の内容・特徴]
 「きぬの波」は、群馬県農業技術センターにおいて、「関東107号」を母とし、「バンドウワセ」を父として交配・育成された。場内および現地試験において、「農林26号」と比較し以下の特徴が確認されたため、奨励品種に採用する。
1. 出穂期、成熟期は1〜3日程度早い。出穂期は平坦地では4月中旬、中間地では5月上旬、成熟期は平坦地では6月上旬、中間地では6月下旬である(表1)。
2. 農林26号と同様の白ふ品種である。
3. 稈長は短く耐倒伏性は優れ、穂長は長く、穂数はやや多い(表1)。
4. 2割程度多収で、千粒重、容積重が大きく外観品質に優れる(表1)。
5. アミロース含有率はやや低く、最高粘度は高く製麺適性に優れる(表2)。
6. 食味は外観の色や弾力感の評価が高く、総合でも優れる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 灰色低地土では子実のタンパク質含有率が低くなりやすいため、茎立期の追肥を適宜行う。
2. 葉にフレッケンの発生が見られるが、収量・品質への影響はない。
3. うどんこ病耐性は農林26号と同等の"やや弱"であるため極端な多肥栽培は避ける。
4. 適応地域は、標高700m以下の平坦地および中間地である。

[具体的データ]
表1 「きぬの波」の生育・収量
表2 「きぬの波」の製粉・製麺適性
表3 「きぬの波」の日本麺の食味

[その他]
研究課題名:普通作物の優良品種の選定と原種生産(麦類品種の比較試験)
予算区分:県単
研究期間:2002〜2007年度
研究担当者:上野直也、石井利幸、浜田亮

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