水稲新品種「天竜乙女(伊那28号)」の認定品種採用(予定)


[要約]
安定多収、耐病性の水稲晩生品種「天竜乙女」を長野県の認定品種に採用した。既存品種「秋晴」に比較して、やや多収、良食味で夏越しの食味低下も少ない。また、割れ籾による黒すじ症状の発生も少ない。

[キーワード]「天竜乙女(伊那28号)」、水稲、新品種、うるち米、晩生、良食味

[担当]長野農事試・作物部、育種部
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
長野県の奨励品種のなかで最も晩生の「秋晴」は1965年の奨励品種採用以来一貫して低暖地の下伊那地域を中心に作り続けられており、2008年の栽培面積は400haである。この「秋晴」作付け地帯の生産者及び流通関係者から、近年の良食味化指向の中で、県育成の新品種によるブランド米の生産が求められている。さらに現地の「秋晴」では割れ籾による玄米の品質劣化(黒すじ症状)も報告されている。これらのことから新たに「天竜乙女(伊那28号)」を導入し、県産ブランドの晩生品種として生産振興を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 「秋晴」に比較し、出穂期及び成熟期は同等かやや早い“晩生”である。稈長はやや短く、強稈で倒伏の発生はやや少ない。穂長はやや長く、穂数はやや少ないが、やや多収である。穂いもちの発生は同等に少なく、白葉枯病の発生も同等である(表1)。
2. 玄米千粒重は「秋晴」と同等でやや小さいが(表1)、心白粒、乳白粒、胴割れ粒の発生は少なく(データ略)外観品質は良好で「秋晴」と同等である(表1)。
3. 食味官能では炊飯米の外観は優れ、粘りやや強く、総合評価は「秋晴」よりやや優る。また、夏(梅雨)越しした場合の食味低下度合いも小さい(表2図1)。
4. 割れ籾による黒すじの発生は「秋晴」より少ない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 育成地によると「秋晴」と比較して、穂いもち病圃場抵抗性はやや強い“強”で、白葉 枯病抵抗性はやや強い“やや弱”である。
2. いもち病には強いが、白葉枯病耐性は充分ではないので発生には留意する。
3. 倒伏に強く、多収であるが多肥栽培を避け、良品質良質米の生産に心がける。
4. 平成2007年3月に種苗登録申請済み、2010年度から「秋晴」からの本格的転換を行う。

[具体的データ]
表1 各品種の生育・収量・品質(長野農事試2002〜2008年、長野南信試2002〜2006年、現地2003〜2008年平均値)
表2 食味官能評価
表3 黒すじ症状の発生程度(2006年、長野南信試) 図1 異なる保存方法による食味

[その他]
研究課題名:水稲奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:2002年〜2008年
研究担当者:酒井長雄、青木政晴、細井淳、高松光生、中澤伸夫、小林勉、山口秀和

目次へ戻る