「常陸秋そば」の早期収穫による見た目・風味の品質向上技術


[要約]
「常陸秋そば」は、収穫時期が早く収穫時の黒化率(そば全子実中における黒く成熟した子実の割合)が低いものほど収量は低くなるが、そば粉の色調は緑色が強くなり、見た目および香りが優れた「そば切り」の原料となる。

[キーワード]ソバ、常陸秋そば、収穫時期、黒化率、収量、品質、食味

[担当]茨城県農総セ・農業研究所・作物研究室
[代表連絡先]電話:029-239-7212
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
「常陸秋そば」は大粒で風味が良いことから実需者からの高い評価を得てきたが、近年国内外との産地間競争が激しくなり、さらなる高品質化・ブランド化が求められている。そこで収穫時期を早めることにより「常陸秋そば」が本来もつ風味の良さを十分に発揮させるために、収穫時の黒化率とそば粉およびそば切りの品質との関係について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「常陸秋そば」の黒化率は、収穫時期が遅くなるにつれて上昇する。また収量は、手刈りでは黒化率60〜80%時点で、汎用コンバインによる収穫では黒化率80〜90%時点での収穫が最も高くなり、それより収穫時期が早いほど黒化率と収量は低下する(図1)。
2. 「常陸秋そば」は、手刈りおよび汎用コンバイン収穫とも収穫時期が早く黒化率の低いものほど、そば粉の色調の緑が強いものとなる(図1)。
3. 収穫時の黒化率が低いほど、生地玉および麺線の緑が強いものとなる(図3)。
4. 収穫時の黒化率が異なる「常陸秋そば」で作成した「十割そば」および「二八そば」の食味評価は、収穫時の黒化率の低いものほど、見た目および香りが優れる傾向にあり、総合評価が高い(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「常陸秋そば」の高品質生産・有利販売に活用する。その際、従来と比べて収量が低くなる点を留意する(図2)。収量・品質の両立を考えた場合、黒化率70%程度での収穫が適する。
2. 黒化率が低い時点での汎用コンバインによる収穫は茎葉水分が高いため、目穴を広くした受け網を装着して、2番還元への茎葉の混入を少なくするような改良を加える必要がある。

[具体的データ]
図1 手刈り天日乾燥における収穫時期・黒化率と収量・そば粉色調との関係
  図2 汎用コンバイン収穫における収穫時期・黒化率と収量・そば粉色調との関係
図3 収穫時の黒化率とそば粉・生地玉・麺線の色調との関係
表1 収穫時の黒化率と「十割そば」(左図)および「二八そば」(右図)の食味評価との関係

[その他]
研究課題名:県育成「常陸秋そば」のトップブランド化と十割そばを活用した食農連携、「プレ・ポスト食育」技術の開発
予算区分:県単事業(いばらき研究開発推進事業)
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:松浦和哉、弓野功、鈴木正明

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