長野県における稲発酵粗飼料用イネの安定生産のための収穫期拡大技術


[要約]
長野県の高標高地では「ふくおこし」と「クサホナミ」の連続収穫体系、平坦地では「ふくおこし」後の「クサホナミ」の収穫体系とする作付体系が適する。「ふくおこし」の収穫開始適期判断には、帯緑色籾歩合が活用できる。

[キーワード]WCS用イネ、収穫期拡大、ふくおこし、クサホナミ、経営計画モデル

[担当]長野農事試・作物部
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
長野県では稲発酵粗飼料用イネ(以下、WCS用イネ)が2地域(団地)で約20ha作付されているが、食用品種である「コシヒカリ」が大部分を占めているため、倒伏やいもち病の発生により安定的な多収生産に至っていない。このため、耐倒伏性、いもち病抵抗性を備えた多収品種の導入と安定多収技術が求められている。また、収穫・調製作業受託者は,食用イネの収穫作業も行っていることから、「コシヒカリ」収穫期を避けた労力分散や専用収穫機の稼働率向上によるコスト低減のためにもWCS用イネの作期分散が不可欠である。そこで、長野県における収穫期拡大による安定多収技術を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「ふくおこし」は、「コシヒカリ」に比べ出穂期・成熟期とも、平坦地で2〜3日・高標高地で6〜15日早く、収量は同等以上で、倒伏は少ない。「クサホナミ」は同様に出穂期は20日程度、成熟期は1ヶ月以上遅いが多収で倒伏は少ない(表1)。
2. 収穫期間は食用「コシヒカリ」の収穫適期を除き、平坦地では「ふくおこし」が9月2日からの12日間、「クサホナミ」が9月28日からの28日間となり、計40日間となる(図1)。高標高地では「ふくおこし」が8月29日からの24日間、「クサホナミ」が9月25日からの40日間となり、計64日間となる(図1)。
3. 「ふくおこし」の収穫開始期は帯緑色籾歩合により判定が可能で、回帰式は,稲体水分含量をy、帯緑色籾歩合を x とすると y = 0.13x + 0.57 (r = 0.69**、稲体水分70%以下条件下)となる。適期である稲体水分65%に相当する帯緑色籾歩合は52%である(データ略)。
4. 経営計画モデル(集落営農組織)の試算を行うと、熟期の異なる複数品種と栽培様式との組合せの作付体系は所得の向上が認められ、食用「コシヒカリ」の収穫期の作業競合を分散するためにも有効な作付体系である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「クサホナミ」は気象条件によって平坦地、高標高地とも降霜により晩限が早まることも想定される。
2. 平坦地での効率的な作期拡大のためには、「ふくおこし」と「クサホナミ」の間に収穫期がおさまる中生種の導入が必要である。
3. 経営計画モデルの活用により栽培様式(品種、移植と直播)との組合せで、労力配分の適正化や所得向上を図る。

[具体的データ]
表1 異なる品種による生育、黄熟期収量の差
図1 長野県における飼料用イネの収穫期間
表2 経営計画モデルによる飼料用イネ導入の試算結果

[その他]
研究課題名:関東地域における飼料イネの資源循環型生産・利用システムの確立
予算区分:地域総合(関東飼料イネ)
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:青木政晴、原啓一郎、細井淳、齊藤康一、袖山栄次、手塚光明

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