いもち病圃場抵抗性遺伝子 pi21 を持つ極良食味の新品種候補系統「中部125号」
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[要約] |
「中部125号」は温暖地東部では中生の早に属する、中間型の水稲粳種である。陸稲「戦捷」からいもち病圃場抵抗性遺伝子 pi21 を導入する際に、 pi21 座と密接に連鎖する不良形質をDNAマーカー選抜によって除去した。いもち病に強く、食味は「コシヒカリ」と同等で極良好である。 |
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[キーワード]水稲、粳、いもち病圃場抵抗性、極良食味 |
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[担当]愛知農総試・山間農業研究所・稲作グループ
[代表連絡先]電話:0565-82-2029
[区分]作物、関東東海北陸農業・水田作畑作
[分類]技術・参考 |
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[背景・ねらい] |
いもち病は稲作における最も重大な病害である。本病の防除には、圃場抵抗性品種の導入が極めて有効だが、コシヒカリと同等の良食味特性といもち病圃場抵抗性を結合させた品種はほとんどない。このため、DNAマーカー選抜育種により、良食味特性と陸稲「戦捷」由来のいもち病圃場抵抗性遺伝子を併せ持つ品種を育成する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
「中部125号」は、1997年に「ミネアサヒ」を母とし、「戦捷」を父として愛知県農業総合試験場山間農業研究所において人工交配を行い、その後ミネアサヒを3回、コシヒカリを2回交配するとともにDNAマーカーを利用して選抜・固定を図ってきた粳系統である。 |
2. |
出穂期、成熟期は愛知山間(温暖地中山間)では「チヨニシキ」よりも2日程度遅く、「コシヒカリ」よりも2日早く"中生の早"に属し、作物研(温暖地東部)では「コシヒカリ」とほぼ同等の"早生の晩"に属する(表1)。 |
3. |
愛知山間では、稈長は「チヨニシキ」より6cm程度長く、「コシヒカリ」より4cm程度短い。穂長は「チヨニシキ」よりも短く、「コシヒカリ」とほぼ同等である。穂数は「チヨニシキ」とほぼ同等で草型は"中間型"である。作物研では、稈長は「コシヒカリ」よりも5cm程度短い。穂長は「コシヒカリ」よりも1cm程度長く、穂数は「コシヒカリ」よりもやや多い。耐倒伏性は"中"である。 |
4. |
収量性は愛知山間では「チヨニシキ」とほぼ同等で、作物研では「コシヒカリ」よりもやや多い。 |
5. |
いもち病真性抵抗性遺伝子型は+と推定され、「戦捷」に由来する圃場抵抗性遺伝子 pi21 を持ち、葉いもち圃場抵抗性は"極強〜強"、穂いもち圃場抵抗性は"強"である(図1)。縞葉枯病に対しては"罹病性"、穂発芽性は"難"、障害型耐冷性は"やや強"である。 |
6. |
玄米の外観品質は「コシヒカリ」同等程度で、千粒重は「コシヒカリ」よりはやや軽い。食味は「コシヒカリ」と同等で極良好である。 |
7. |
染色体領域は、第4染色体の pi21 座を含む約700kbのみを「戦捷」型とし、その他の領域はすべて「コシヒカリ」または「ミネアサヒ」に置換されている(図2)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
適応地帯は福島以西の地力中庸〜肥沃地である。 |
2. |
耐倒伏性は"中"であるため、適正な施肥水準を遵守する。 |
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![]() [具体的データ] |
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![]() [その他] |
研究課題名:山間・中山間地向き優良品種育成試験、ゲノム育種
予算区分:指定試験、新農業展開プロ
研究期間:1997〜2008年度
研究担当者: |
坂 紀邦、福岡修一(生物研)、安東郁男(作物研)、寺島竹彦、佐藤宏之(作物研)、前田英郎(作物研)、加藤博美、加藤恭宏、遠藤征馬、工藤 悟、城田雅毅、大竹敏也、井上正勝 |
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