水稲種子発芽率への低水温浸種の影響と発芽率低下が起こる浸種条件


[要約]
低水温浸種による発芽率の低下は種子の貯蔵期間に関わらず起こりえ、前年産でも発芽不良が発生する危険性の高い種子がある。発芽率には浸種直後2〜24時間の水温が強く影響し、短時間の低水温浸種によって発芽率は低下する。

[キーワード]水稲種子、低水温浸種、発芽率低下、低下要因

[担当]三重農研・作物研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6354
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
三重県の早期栽培水稲では、低温期の3月上旬から浸種作業が始まる。10℃未満の低水温で浸種を行うと発芽が不良となる場合があるが、発芽率が低下しやすい種子の条件は明らかになっていない。そこで、本県の主たる栽培品種について、産地、ロット、産年、貯蔵期間が異なる種子を供試して、低水温浸種が発芽率に及ぼす影響について検討し、さらに発芽率の低下が起こる浸種条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 低水温(5〜6℃)と適水温(12〜13℃)で5日間浸種した品種、産地、生産者、ロット、産年、貯蔵期間が異なる水稲うるち種子34点の発芽率を比較すると、23点(68%)は低水温浸種の5日目の発芽率が適水温浸種の発芽率より有意に低い。適水温浸種の発芽率と低水温浸種の発芽率には高い相関関係が認められ、適水温浸種の発芽率が低い種子ほど低水温浸種で発芽率は低下しやすい(図1)。
2. 低水温浸種の5日目の発芽率が70%未満の種子が8点(24%)あり、これらの種子は生産現場においても低水温浸種で発芽不良が発生する危険性が高い(図1)。
3. 低水温浸種による発芽率の低下と品種、産年及び貯蔵期間との関係は明らかでなく、前年産(貯蔵期間0.5年)でも低水温浸種で発芽率が低下しやすい種子がある。また、同一品種・産地であっても、ロットによって低水温浸種による発芽率の低下程度は異なる(図1)。
4. 浸種期間の水温条件を変えて浸種したところ、3日目の発芽率には浸種期間の積算水温が影響するが、5〜10日目の発芽率には浸種直後24時間の水温が強く影響する。浸種直後24時間を低水温(5.9℃)で浸種した種子は、その後を適水温(13.3℃)で浸種しても発芽率は回復しない(図2)。
5. 低水温(5.2℃)で2〜24時間、含水率18〜26%まで浸種した後、5日間風乾した種子の発芽率は、無処理種子に比べて低下する(表1)。
6. 低水温浸種による発芽率の低下は、種子の吸水期(A相)初期における低温水の吸水によって引き起こされる。

[成果の活用面・留意点]
1. 種子の安定供給、水稲育苗管理指導の参考となる。
2. 三重県で栽培される主要なうるち品種の、採種後4ヶ月以上経過した種子を供試して得られた結果である。品種や種子の休眠程度によって低水温浸種にともなう発芽反応は異なる可能性がある。

[具体的データ]
図1  品種、産地、ロット、産年、貯蔵期間が異なる水稲種子における適水温浸種と低水温浸種の発芽率の関係
図2 低水温浸種の時期・日数が発芽率に及ぼす影響  表1  短時間の浸種処理が発芽率に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:主要農作物種子対策事業
予算区分:県単
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:北野順一、中山幸則、松井未来生、大西順平

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