食べきりサイズで美味しいサツマイモ新品種候補系統「関東124号」


[要約]
サツマイモ「関東124号」は、肉質がやや粘質でしっとりとしていて、良食味である。調理後の肉色は鮮やかな黄色である。「ベニアズマ」「高系14号」よりも収量は少ないが、いもが小さく、食べきりサイズの200g以下いも収量は多い。両品種より病害に強い。

[キーワード]サツマイモ、甘しょ、焼きいも、良食味、小いも

[担当]作物研・食用サツマイモサブチーム
[代表連絡先]電話:029-838-8500
[区分]作物、関東東海北陸・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
青果用サツマイモの主力品種「ベニアズマ」は、粉質で良食味なため関東地方を中心に約12,000haで栽培され、また、もう一つの主力品種「高系14号」は、肉色が淡く食味は中程度ではあるが、貯蔵性に優れ、汎用性が高いため、西日本を中心に約8,500haが栽培されている。これらの品種は病虫害抵抗性に問題があり、病虫害に強い新品種が求められている。一方、消費者からは従来のいもでは大きすぎるとの指摘があり、消費傾向では柔らかい食感を持つやや粘質のいもを好む嗜好の変化がみられる。そこで、病虫害抵抗性に優れ、「高系14号」より食味に優れ、「ベニアズマ」よりも粘質で、従来より小さないもをつける品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「関東124号」は、いもがやや小さく食味が優れる「九州127号」を母、つる割病と立枯病に強く食味が優れる「関系91」を父とする交配組合せから選抜した系統である(図1)。
2. 蒸しいも、焼きいもの肉質はやや粘質でしっとりとしていて、食味が優れる(表1図2-a)。また、小さないもも良食味である(表1図2-b)。
3. 「ベニアズマ」「高系14号」に比べて調理後の黒変が少なく、肉色は鮮やかな黄色である(図1)。
4. いもの大きさは「ベニアズマ」「高系14号」の6割ほどの重さの140g程度と小さい。上いも重は両品種に比べて少ないが、食べきりサイズの200g以下のいも重は多い(表1図3)。
5. 立枯病、つる割病、黒斑病の抵抗性はやや強で、「ベニアズマ」「高系14号」よりも病害に強い(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培適地は全国のサツマイモ栽培地域である。埼玉県で有望視されている。
2. 規格外として扱われる小さないもも利用できる。いもが小さいことや良食味といった特徴を生かした販売方法が必要である。
3. 疎植や栽培期間が長くなることにより一個重が大きくなるので、用途により栽植密度や栽培期間を検討する必要がある。

[具体的データ]
図1 「関東124号」のいもと焼きいもの外観・切断面  図3 規格別のいも重量
図2 焼きいもアンケートによる評価【一番好きな品種(円グラフ)とその理由(複数回答、棒グラフ)】
表1 収量、食味、病虫害抵抗性の特性

[その他]
研究課題名:良食味で加工適性に優れた甘しょ品種の育成と新たな有用特性をもつ甘しょ育種素材・系統の開発
課題ID:311-e
予算区分:基盤
研究期間:1999 〜2008年度
研究担当者:熊谷 亨、高田明子、藏之内利和、中村善行、片山健二、中谷 誠、田宮誠司、小巻克巳

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