砕粒率の低いビール大麦は、穀粒硬度と千粒重で選抜できる


[要約]
ホルドインドリンB2遺伝子型がHinb-2の二条大麦における精麦時の砕粒率は、穀粒硬度と負の相関があり、千粒重と正の相関がある。これらの測定値を用いた回帰式から、砕粒率の低い系統を選抜することが可能である。

[キーワード]二条大麦、砕粒率、精麦品質、穀粒硬度、千粒重

[担当]栃木農試・栃木分場・育種指定、品質指定
[代表連絡先]電話:0282-27-2711
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
ビール醸造用大麦の契約数量が漸減傾向にある中で、その振興を図るにはビール大麦を多用途に利用する必要がある。ビール醸造用品種の一部は食用等として精麦利用されているが、搗精時に砕粒が多く、改善が強く望まれている。砕粒の評価には搗精が必要であるが、ビール醸造品質の評価に必要な種子量を考慮すると、中後期世代以降で評価せざるを得ないため、選抜効率が低下している。そこで、砕粒率と穀粒硬度(SKCS硬度計のHI値)や千粒重、ホルドインドリン( Hinb-2 )遺伝子型の関係を調査し、より早い世代から効率的に砕粒率を評価できる選抜法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 穀粒形質と砕粒率との相関関係を調べるとホルドインドリンB2の遺伝子型が Hinb-2 の系統では、穀粒硬度と千粒重で有意な相関が認められた(表1)。
2. 1から、砕粒率に対する穀粒硬度と千粒重を変数とした回帰式を算出し、 Hinb-2 系統を対象とした「砕粒率 = -0.335 × 穀粒硬度 + 0.608 × 千粒重 -1.642 (R2 = 0.56)」を得た。
3. 本回帰式を用い、砕粒率の優れる上方50%を選抜すると仮定した場合、回帰式選抜では、2004年度九州沖縄農研産の系統で選抜率71%(図1)、年次・産地の異なる2006年度栃木分場産の系統では73%と、無選抜に比べて砕粒率の低い系統の割合が向上した(図2)。
4. 麦芽関連形質については、回帰式で算出した砕粒率の低い系統と高い系統間で有意な相関は認められない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本回帰式はビール大麦系統を対象とする。
2. ビール大麦の育種において種子量が少なく搗精が不可能な初中期世代から、本回帰式を用いて砕粒率の低い系統の選抜が可能である。
3. 穀粒硬度が軟らかくても変異型 Hinb-2 bと判別されてしまう系統(大系HL117型)や、変異型 Hinb-2 bを持つ品種(ミハルゴールド、しゅんれい)が報告されているため、必ず系譜や Hinb-2 遺伝子型を調べてから本回帰式を適用する必要がある。

[具体的データ]
表1 遺伝子型判別でHinb-2型と判定された2004年度育成系統51系統の相関係数
図1 2004年度育成系統における搗精試験による砕粒率と回帰式による砕粒率の関係  図2 2006年度育成系統における搗精試験による砕粒率と回帰式による砕粒率との関係
表2 回帰式により算出した砕粒率の麦芽品質特性

[その他]
研究課題名:砕粒率の低いビール大麦育成のための選抜法の確立
予算区分:指定試験
研究期間:2007年度
研究担当者:沖山毅・河田尚之(九州沖縄農研)・渡邉浩久・五月女敏範・長嶺敬(近中四農研)・橋飛鳥(近中四農研)・山敏之


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