コムギの節間伸長期以降の湿害症状を指標とする耐湿性簡易評価法


[要約]
コムギの節間伸長期以降の耐湿性は、下葉の枯れ上がり程度及び穂の枯れ熟れ程度を指標とする観察調査により簡易に評価することができる。

[キーワード]コムギ、耐湿性、簡易評価法、節間伸長期、下葉の枯れ上がり、穂の枯れ熟れ

[担当]愛知農総試・作物研究部・小麦指定
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作、作物
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
コムギの生産現場ではしばしば湿害が発生し、収量・品質が不安定となる要因のひとつとなっている。そのため遺伝的に耐湿性を向上させることが求められる。耐湿性は最終的には土壌過湿条件下での生産力によって評価されるが、収量調査は労力がかかるため検定数が限られる。そこで、一次スクリーニングとして多点数を評価することのできる耐湿性簡易評価法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 土壌の過湿処理は地下水位5cm程度とし、節間伸長期から成熟期まで継続して行う。
2. 土壌の過湿による下葉の枯れ上がり程度及び穂の枯れ熟れ程度を健全度の指標とする(表1)。
3. 下葉の枯れ上がり程度は農林61号の出穂期前後に調査する。穂の枯れ熟れ程度は農林61号の出穂期から25日後の前後に調査する。
4. 下葉の枯れ上がり程度及び穂の枯れ熟れ程度の進展には品種間差が認められる(図1)。
5. 下葉の枯れ上がり程度のスコアと穂の枯れ熟れ程度のスコアの平均値を用いると、そのいずれか一方よりも収量との相関が高くなる(図2)。この下葉の枯れ上がり程度のスコアと穂の枯れ熟れ程度のスコアの平均値を耐湿性スコアとする。
6. 農林61号(耐湿性:中)を対照品種とし、耐湿性スコアの対農林61号比率を基準品種のイワイノダイチ(耐湿性:中〜やや強)、はつほこむぎ(耐湿性:やや弱)、UNICULM(耐湿性:弱)と比較して耐湿性の強弱を判定する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 農林61号と比べて出穂期が10日程度早い品種系統から2,3日遅い品種系統にまで適用できる。
2. ほ場をできるだけ均平にし、対照品種の配置を多くして、ほ場の高低差による判定の誤差が生じないようにする。
3. 調査は複数回行い、基準品種の品種間差が最も現れていたときのスコアを判定に用いる。

[具体的データ]
表1 湿害症状の調査基準
下葉の枯れ上がり程度及び穂の枯れ熟れ程度の進展の品種間差(2007)
図2 耐湿性スコアと収量との関係(上段2006,下段2007)
図3 耐湿性スコアの対対照品種比率(2006,2007)

[その他]
研究課題名:温暖地西部の多湿水田輪換畑向け早生、良質小麦品種の育成
予算区分:指定試験事業
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:吉田朋史、藤井潔、辻孝子

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