水稲品種「コシヒカリ」の良食味性に関与する第3および第6染色体上のQTL


[要約]
「コシヒカリ」の持つ良食味性を支配するQTLが第3および第6染色体上の2領域に検出され、そのうちの特に第3染色体のQTLは作用力が大きい。

[キーワード]食味、QTL(quantitative trait locus)、戻し交雑自殖系統群(backcross inbred lines:BILs)、染色体断片置換系統(chromosome segment substitution line:CSSL)、イネ

[担当]作物研・稲マーカー育種研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8808
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
炊飯米の食味は最も重要な形質の一つであり、育種における選抜にあたっては今日でも食味官能試験が最も確実であるが、試験には多くの時間と労力が必要である。そこで母本として広く用いられている良食味品種「コシヒカリ」の持つ良食味遺伝子について遺伝解析を行い、DNAマーカーによる効率的な選抜技術の開発を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 米飯の食味官能試験(光沢、うま味、粘り、硬さおよび総合評価値の5項目)によって評価される「日本晴」に対する「コシヒカリ」の良食味性を支配する遺伝子座が第3染色体短腕と第6染色体の2領域に見出され、食味を下げる遺伝子座が第3染色体長腕と第11染色体の2領域に存在する(図1)。
2. 良食味性を支配する遺伝子座のうち、第3染色体短腕のQTLは、作用力が大きく(寄与率:約20%)、第6染色体のQTLは、作用力が小さい(寄与率:約10%)。
3. 第3染色体短腕のQTLは、「日本晴」と「コシヒカリ」の食味総合値の差の約半分を単独で説明する作用力を持つ(図2)。
4. 第3染色体短腕上のQTLは、アミロース含有率には関与していない(データ省略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 作用力の大きな第3染色体短腕上のQTLは、「コシヒカリ」の良食味遺伝子解明の手がかりとなる。
2. このQTL情報は、「コシヒカリ」を供与親とした育種材料の食味をDNAマーカー選抜するために利用できる。

[具体的データ]
図1.「コシヒカリ」と「日本晴」の交雑に由来する「日本晴」の戻し交雑自殖系統群(BILs)(A)と「コシヒカリ」のBILs(B)用いて見出した食味官能評価値のQTL
図2.日本晴を遺伝的背景とし第3染色体短腕にコシヒカリ型のゲノムを有する染色体断片置換系統(CSSL)のグラフ遺伝子型と食味官能評価

[その他]
研究課題名:玄米成分関連遺伝子の同定
課題ID:221-g
予算区分:委託プロ(イネの量的形質遺伝子の同定)(DNAマーカー)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:竹内善信、堀 清純(生物研)、鈴木啓太郎(食総研)、野々上慈徳(STAFF研)、竹本陽子、前田英郎、佐藤宏之、平林秀介、太田久稔、石井卓郎、加藤 浩、根本 博、井辺時雄(九州研)、大坪研一(新潟大)、矢野昌裕(生物研)、安東郁男
発表論文等:Takeuchi Y. et al. (2008) Breed. Sci. 58(4):437-445

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