接触刺激によるブロッコリーセル内施肥育苗の発根促進


[要約]
ブロッコリーセル内の窒素施肥育苗では、葉の接触刺激により苗の発根促進や徒長抑制など苗質向上に関与し、エチレンを生成するが、品種によりその効果は異なる。

[キーワード]ブロッコリー、接触刺激、セル内施肥育苗、発根促進

[担当]埼玉水田農研・生産環境担当
[代表連絡先]電話:048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
ブロッコリーの生産現場におけるリン酸及びカリ蓄積圃場では、これらの肥料成分をほとんど含まないセル内施肥育苗が有効である。しかし、全量基肥法では一部の苗で根張りの抑制や徒長が散見されるため、発根を促進する接触刺激を利用した苗質向上について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 接触刺激は午前と午後に4往復ずつ、手で苗の地上部がねる程度の刺激を加えると、ブロッコリーセル苗の総根長、総根数及び最長根長は増加するが、処理効果に品種間差が認められる(表1)。
2. リン酸及びカリをほとんど含まないブロッコリーセル内施肥育苗の場合、濃度障害がみられず、品種「ピクセル」では接触刺激によって発根が促進する(図1)。
3. ブロッコリーセル内施肥育苗では、接触刺激によって地上部の徒長が抑制され、総根長及び最長根長が増加するなど、苗品質の向上効果が認められる(表2)。
4. セル内施肥の有無に関係なく、接触刺激によって根の生育に関与する低濃度のエチレンが生成する傾向が認められる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本葉が伸長を始める時期から、午前と午後に4往復ずつ、手で苗の地上部がねる程度の接触刺激を加えると、苗が徒長しやすい条件でも高温時などの育苗に効果がある。
2. セル内施肥育苗の場合、接触刺激の処理効果はアントシアニン系品種で発現しやすく、市販培土を用いた慣行栽培に比べて、培土は乾燥しやすい傾向がある。
3. ブロッコリーセル苗全量基肥法は、リン酸・カリ蓄積圃場の改善に効果があり、生育・収量及び品質は慣行栽培と同等である(平成19年度成果情報)。

[具体的データ]
表1 市販培土を用いたブロッコリーセル育苗における接触刺激の影響(3品種) 
図1 接触刺激がブロッコリーセル内施肥育苗の生育に及ぼす影響 (品種:ピクセル)
表2 セル内施肥育苗での接触刺激がブロッコリーの生育・発根に及ぼす影響 (品種:ピクセル)
図2 品種ピクセルにおける接触刺激がエチレン生成量に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:露地野菜地帯における低投入施肥管理技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2005〜2008年度
研究担当者:鎌田 淳、丸岡久仁雄、渡辺俊朗、江村 薫

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