堆肥等による作物のカドミウム吸収抑制効果は土壌全炭素含量から判断できる


[要約]
牛ふん堆肥施用により大豆子実およびホウレンソウ地上部カドミウム(Cd)濃度が低下する。全炭素含量が低い土壌では堆肥等施用によるCd吸収抑制効果が高いため、土壌全炭素含量からその効果を判断できる。

[キーワード]カドミウム、土壌全炭素含量、牛ふん堆肥、ホウレンソウ

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・環境安全グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
近年、より安全な農産物を消費者に提供することが求められている。一方、これまで作物体中の重金属濃度抑制対策の1つとして、堆肥など有機物施用による農作物のCd吸収抑制効果が報告されている。そこで、堆肥施用によるCd吸収抑制効果を検証するとともに、土壌全炭素含量とCd吸収特性の関係を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 牛ふん堆肥施用量の増加に伴い、大豆子実中Cd濃度が低下する。また、牛ふん堆肥施用による子実中Cd濃度の低下は、苦土石灰により土壌pHを同程度の高さに矯正した場合よりも大きいため(図1)、堆肥によるCd吸収抑制のメカニズムはpH矯正による吸収抑制効果だけでなく、その他の要因も関わっている。
2. 牛ふん堆肥施用量の増加により土壌全炭素含量が増加し、ホウレンソウ地上部Cd濃度が低下する。土壌の種類別では黄色土、灰色低地土、黒ボク土の順に地上部Cd濃度が高く、全炭素含量の高い黒ボク土では他の土壌に比べ低い(図2)。
3. 腐植酸質資材施用量の増加により土壌全炭素含量が増加し、ホウレンソウ地上部Cd濃度が低下する(図3)。
4. 土壌全炭素含量増加に伴うホウレンソウ地上部Cd濃度の低下は全炭素含量が低い土壌で顕著である(図4)。全炭素含量が低い土壌では堆肥等施用によるCd吸収抑制効果が高いため、土壌全炭素含量からその効果を判断できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験では堆肥施用効果の確認のため基準を超えた堆肥施用を行ったが、過剰な施用は作物の生育障害や環境負荷を引き起こす危険性があるため、堆肥施用の際は定められた施用基準を遵守する。
2. ホウレンソウの試験(図2)は Cd(CdCl2) を土壌に添加し、Cd濃度を高めて実施したものである。
3. 作目や品種によりCdの吸収特性は異なるため、堆肥によるCd吸収抑制効果も異なると考えられる。

[具体的データ]
図1 牛ふん堆肥および苦土石灰施用が大豆子実中Cd濃度に及ぼす影響  図2 土壌の種類と牛ふん堆肥施用がホウレンソウの地上部Cd濃度に及ぼす影響
図3 腐植酸質資材施用がホウレンソウの地上部Cd濃度に及ぼす影響  図4  土壌全炭素含量とホウレンソウの地上部Cd濃度の関係

[その他]
研究課題名:農作物のカドミウム吸収抑制技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:吉川那々子、大橋祥範、武井真理、瀧勝俊

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