茨城県の特別栽培農産物認証制度に適合するカンショ病害虫防除体系


[要約]
カンショの土壌害虫に対するD−D剤(全面処理)と殺虫剤(作条処理)による防除は、カズサホスマイクロカプセル剤(全面土壌混和)による防除に替えることができる。さらに、食葉性ガ類の防除を省略することによって、化学合成農薬の使用成分回数を4回以内にできる。

[キーワード]カンショ、特別栽培農産物、防除体系、カズサホスマイクロカプセル剤

[担当]茨城農総セ農研・病虫研
[代表連絡先]電話:029-239-7213
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
カンショ栽培では、複数の土壌病害虫や食葉性害虫が発生する。茨城県の特別栽培農産物認証制度に適合させるためには、これら病害虫に対する化学合成農薬使用成分回数を慣行使用成分回数の1/2に削減した病害虫防除体系が必要となる。そこで、カンショの土壌害虫に登録のあるカズサホスマイクロカプセル剤を用い、当制度に適合した防除体系を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. カズサホスマイクロカプセル剤(全面処理土壌混和)とクロルピクリンくん蒸剤(畦内処理)の併用処理により、ネコブセンチュウ、コガネムシ類およびハリガネムシ類に対して、慣行防除体系(D−D剤(全面処理)、クロルピクリンくん蒸剤(畦内処理)およびMPP粒剤(畦内処理)の併用処理)と同等の防除効果が得られる(表1)。
2. カンショでは秋季にナカジロシタバ、エビガラスズメ、ハスモンヨトウ等の食葉性ガ類幼虫が発生する。これら害虫により葉が甚だしく食害された場合、上いも1個重はやや低下するが、面積あたりの上いも重には影響がない。また、商品性の高いM品+L品いも重、でんぷん歩留、外観品質への影響は認められない。これらのことから、秋季の食葉性ガ類の防除を省略することが可能である(図1)。
3. 9成分回数を使用する慣行の防除体系から食葉性ガ類に対する防除を省略し、使用薬剤をカズサホスマイクロカプセル剤(全面処理土壌混和)、クロルピクリンくん蒸剤(畦内処理)、ベノミル水和剤(苗消毒)、除草剤(1成分のもの)とすることによって、化学合成農薬使用成分回数は4回となり、茨城県の特別栽培農産物認証制度(使用基準4回)に適合する防除体系に替えることができる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「ベニアズマ」(普通掘り)の試験結果の解析に基づくものであり、他の品種や栽培法への適用については、別途検討が必要である。
2. ナカジロシタバの多発生時には、幼虫が隣接圃場や住宅へ餌を求めて移動する事例が多い。そのため、特別栽培を行う圃場には、ナカジロシタバが周辺に影響を及ぼさない場所を選定する。
3. 本成果に記載された薬剤は、いずれもカンショで登録がある(2009年1月現在)。

[具体的データ]
表1 カンショの土壌害虫に対する防除効果(2007年)
図1 食葉性ガ類による被害がカンショの収量、品質に及ぼす影響(2007年)
表2 茨城県特別栽培農産物認証制度に適合するカンショ病害虫防除体系の例と薬剤費
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[その他]
研究課題名:かんしょ食葉性ガ類の防除対策と特別栽培農産物に適合する病害虫防除体系の確立
予算区分:県単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:横須賀知之、大橋真理子、柴田夏実、上田康郎

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