被覆周縁部固定による土壌還元消毒のホウレンソウ萎凋病に対する防除効果向上


[要約]
土壌還元消毒中、ポリフィルム被覆周縁部に水を封入したポリダクト(折幅20cm)、または、単管パイプを設置し固定すると、被覆周縁部でのホウレンソウ萎凋病の防除効果が高まる。

[キーワード]土壌還元消毒、ホウレンソウ萎凋病、被覆周縁、固定、ポリダクト、単管パイプ

[担当]群馬農技セ・園芸部・病害虫係
[代表連絡先]電話:0270-63-3608
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
土壌還元消毒法は薬剤に依らない土壌消毒法として、群馬県ではキュウリ、ホウレンソウなどで導入されている。しかし、現地では作業上、ポリフィルム被覆周縁部を土で固定することが難しいことから、被覆フィルム展張後、周縁部を固定しない場合が多い。そのため、被覆周縁部では、中央部に比べ土壌水分が不足し還元化が不十分になり発病が多く、防除効果が不安定になる傾向がある。そこで、雨よけ栽培で発生するホウレンソウ萎凋病を対象に、被覆周縁部の防除効果を高める技術を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 被覆フィルム周縁に、水を封入した折幅20cmのポリダクト(以下、水封ダクト)を設置すると、被覆周縁部の還元状態が被覆中央部と同様に持続する(図1)。
2. 水封ダクトを設置すると被覆周縁部の発病が、無設置の場合と比べ少なくなり、被覆中央部と同様に高い防除効果が得られる(表1)。
3. 単管パイプ(直径48.6mm、長さ3m)を設置した被覆周縁部でも、水封ダクトの設置と同等の効果が得られる(表1)。
4. 水を封入した折幅5cmのポリチューブ(以下、水封チューブ)の設置では防除効果の向上は得られない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 活用可能な資材の概要は、以下のとおりである。
ポリダクト:材質 ポリエチレン、折幅 20cm、厚さ 0.10mm、水を封入した場合の1m当たり重量は約12.5kg、参考価格 20,160円/1000m(1ロット100m巻×10本、特注品)
単管パイプ: 材質 炭素鋼、直径48.6mm、厚さ2.4mm、重量2.73kg/m、参考価格1,050円/3m
2. 水封ダクトまたは単管パイプは、土壌還元消毒の処理において、被覆フィルム展張後に設置する。
3. 水封ダクトまたは単管パイプを設置する際、あらかじめ被覆周縁部に溝を切っておくと資材が動かず、被覆フィルム周縁部をよく固定できる(図2)。

[具体的データ]
図1 深さ10cmの酸化還元電位の推移  図2 水封ダクト設置断面図
表1 被覆周縁部の固定によるホウレンソウ萎凋病の防除効果(農技センター内ほ場)
表2 被覆周縁部の固定によるホウレンソウ萎凋病の防除効果(現地発病ほ場)

[その他]
研究課題名:土壌還元消毒法および天敵利用による病害虫防除における現地適応技術の開発・検証
予算区分:食の安全・安心確保交付金
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:三木静恵、池田健太郎
発表論文等:三木ら(2008)関東病虫研報 55:15-18

目次へ戻る