岐阜県の高冷地産地で発生したダイコン黒芯症の発生原因とその防除


[要約]
ダイコン根内部の黒芯部から Pseudomonas syringae pv. maculicolaが分離され、分離細菌を接種すると黒芯症(根部)と黒斑細菌病(葉部)が再現される。カスガマイシン・銅水和剤を3回散布することで黒芯症の発生が軽減できる。

[キーワード]ダイコン、黒斑細菌病、黒芯症、Pseudomonas syringae pv. maculicola

[担当]岐阜農技セ・環境部
[代表連絡先]電話:058-239-3135
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
2004年に岐阜県の高冷地ダイコン産地において根内部が黒変する障害が多発した(以下「黒芯症」と称す)。ダイコン根部表面及び内部が褐変する症状は、竹内ら(1989)によって黒斑細菌病の一症状であることが報告されている。しかし、本県で発生した黒芯症は葉に黒斑細菌病の病斑が観察されるものの、その多くの株で根表面の黒変は観察されない。このことは、被害株を出荷前に除去することが困難であるため、高品質なダイコンを生産する上で深刻な問題となっている。そこで、黒芯症の発生原因とその対策を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 黒芯症は、根表面は健全であるが根内部のみが黒変する症状である。根内部の黒変部からは細菌が高率に分離され、分離細菌は Pseudomonas syringae pv. maculicola と同定された。分離菌を健全なダイコンに接種することで黒芯症および黒斑細菌病が再現できる(図1)。これらのことから、黒芯症は黒斑細菌病の一つの症状である。
2. 品種:夏つかさを用いて播種時から7日間間隔で分離細菌(濃度108cells/ml)を灌注接種すると、全ての接種時期で葉に黒斑細菌病の病斑が形成され、黒芯症は播種時から播種42日後に接種した区で発生する。黒芯症は播種21〜28日後に接種すると顕著に発病する(図2)。
3. 黒芯症が少または中発生の場合は、カスガマイシン・銅水和剤(1,000倍液)を播種約2、3、4週間後の3回散布することで黒芯症の発生を抑制できる(図3)。
4. 黒芯症が多発生の場合には、薬剤散布を行っても黒芯症の発生を抑制できない場合がある(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. カスガマイシン・銅水和剤は生育後期の高温時に散布すると、根頭部に薬害が発生する場合があるため注意が必要である。

[具体的データ]
図1 ダイコン黒芯症とその原因菌  図2 病原菌の接種時期が黒斑細菌病(上)と黒芯症(下)の発病に及ぼす影響
図3 カスガマイシン・銅水和剤の黒芯症に対する防除効果

[その他]
研究課題名:夏ダイコンの内部障害対策技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年
研究担当者:堀之内勇人、渡辺秀樹、白川隆(野菜茶研)

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