ダイズに縮葉モザイク症状を呈する新種の植物ウイルスの発生


[要約]
新潟県の現地ダイズほ場で発生したモザイク症状や縮葉症状の病原は、その諸性状から新種の植物ウイルスである。本ウイルスは新潟県内の広範囲な地域に分布している。

[キーワード]ダイズ、新種の植物ウイルス

[担当]新潟農総研・作物研
[代表連絡先]電話:0258-35-0836
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・普及

[背景・ねらい]
近年に新潟県内の大豆ほ場において未報告と思われるウイルス病が発生した。いずれのほ場も水田転換畑で、特にアブラムシが多発した形跡はなく、また、既報の植物ウイルスはほとんど検出されなかったことから、世界的に未報告の病原ウイルスの関与が示唆された。そこで、病原ウイルスの諸性状を明らかにし、防除対策に資する。

[成果の内容・特徴]
1. ダイズ感染株は、葉にモザイク症状や縮葉症状を呈し、株全体が萎縮する(図1A)。種皮に痘痕状の隆起を生じるが(図1B)、褐斑粒にはならない。
2. 新潟県で栽培されている主要ダイズ品種はすべて感染する。汁液接種では、エンドウやスイートピーにも無病徴全身感染する(表1)。
3. 病原ウイルスは、約500nmの屈曲したひも状ウイルスである(図2)。
4. 遺伝子解析の結果、本ウイルスは土壌中の Polymyxa 属の原生動物によって媒介される Bymovirus 属ウイルスに近縁であることが示唆されるが(図3)、媒介生物は現時点では特定されていない。本ウイルスの名称をダイズ縮葉モザイクウイルス(英名soybean leaf rugose mosaic virus, SLRMV)として提案する。
5. 本ウイルスは、2004〜2006年に県内11市1村で採取したダイズ試料からも検出される。

[成果の活用面・留意点]
1. 本ウイルスによるダイズ株の症状は、褐斑粒原因ウイルス(ラッカセイわい化ウイルス、ダイズモザイクウイルス等)による症状と区別できない。

[具体的データ]
図1.ダイズ(品種エンレイ)における病徴(A小泉貴広氏原図)  図2.ウイルス粒子の電子顕微鏡像
表1.SLRMV(仮称)を汁液接種したときの検定植物の反応
図3.外被タンパク質コア領域のアミノ酸配列に基づいたPotyvirus科におけるSLRMVの位置付け

[その他]
研究課題名: 1)ダイズ種子伝染性病害の無毒化技術を中心とした健全種子生産技術の開発
2)新たな栽培環境に対応した稲・大豆病害虫の発生予察技術、防除技術の開発
予算区分:1)生物機能、2)県単経常
研究期間:1)2004〜2008年度、2)2007〜2008年度
研究担当者:黒田智久、堀 武志、佐藤秀明、石川浩司

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