伝染源からの距離別に葉いもちの病斑数を推定する式


[要約]
伝染源からの胞子飛散により1回の感染で形成された葉いもち病斑の分布は、4種類の異なる勾配からなり、それぞれに指数関数式が適合する。これらを組み合わせた式により伝染源からの距離別の病斑数が推定できる。

[キーワード]胞子飛散、葉いもち病斑、勾配、病斑数、推定式

[担当]新潟農総研・作物研・栽培科
[代表連絡先]電話:0258-35-0836
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
いもち病菌のレース変動は、主に胞子の飛散による菌の移入・移出とイネの真性抵抗性による選択で生じると考えられ、その予測には菌の拡散様式を明らかにする必要がある。これまで、近距離と中距離では異なる勾配で菌が拡散することは知られていたが、伝染源における感染の規模と距離別の病斑数との関係は不明であった。そこで、これらを明らかにし、いもち病菌の動態解明に資する。

[成果の内容・特徴]
1. 伝染源からの距離別の葉いもち病斑数には、1m以内、1〜7m、7m以上で異なる勾配が認められる。また、700mまで拡散する緩やかな勾配が存在し、それぞれに指数関数式(式1〜4)が適合する(図1表1)。
2. 4種類の指数関数式を組み合わせた次式を使うと、発病程度が異なる伝染源からの距離別の病斑数が推定できる(図2)。

×(51.76-3.962 X + 2.28-1.04415 X+0.0121-0.06965 X+0.000102-0.0058 X)/54.052202

:伝染源からの距離mで形成される病斑数、:伝染源からの距離(m)
:伝染源からの距離0mで新たに形成される病斑数、:自然対数の底

表計算ソフトで計算する場合の入力例

B1 * ( (51.76 * EXP(−3.965 * A2) + 2.28 * EXP( −1.045 * A2)
+ 0.0121 * EXP(−0.07 * A2) + 0.000102 * EXP(−0.006 * A2) )/54.052202)
B1:伝染源で新たに出現する病斑数を入力したセルの番号
A2:伝染源からの距離を入力したセルの番号

3. 推定式で算出した病斑数は、鈴木(1969)の調査値と適合しており、近距離における推定精度は高い(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 地域のいもち病菌レースの変動予測に有用である。
2. 発病進展に伴う発病の空間的な広がりの解析や、多発生ほ場が伝染源として周辺ほ場に与える影響の評価などに利用できる。

[具体的データ]
図1 伝染源からの距離ごとの株あたり病斑数(左:2004年場内、右:1999年中之口)
表1 4種の病斑数の勾配を近似する指数関数式
図2 伝染源からの距離別の推定病斑数  図3 推定値と実測値の適合

[その他]
研究課題名: 1) いもち病伝染源域の防除による低コスト・環境保全型防除技術
2)「いもち病に強いコシヒカリ」の安定・継続的利用技術の開発
3)コシヒカリBLによる農薬低減栽培技術の確立
予算区分:1)国補(地域基幹)2,3) 県単特別
研究期間:1) 1999〜2003年度、2) 2004〜2006年度、3)2007〜2008年度
研究担当者:石川浩司、黒田智久、佐藤秀明、堀武志、佐々木行雄、原澤良栄、小潟慶司

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