Olpidium virulentus 休眠胞子の活性染色法


[要約]
Tetrazolium bromide(MTT)のトリス-グリシン溶液に、35℃で1〜4日間浸漬することにより、活性のある Olpidium virulentus の休眠胞子を高率に染色できる。

[キーワード] Olpidium virulentus 、休眠胞子、活性染色、Tetrazolium bromide

[担当]富山農総セ・園研
[代表連絡先]電話:0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
Olpidium virulentus は土壌に生息する菌類の一種で、チューリップ微斑モザイクウイルスやミラフィオリレタスビッグベインウイルスなどの植物ウイルスを媒介する。本菌は人工培養が困難で、休眠胞子の発芽あるいは死滅の有無などを評価する手法が無いため、土壌中での動態や死滅条件などを調査できない。そこで、 Phytophthora 属菌卵胞子の活性染色に用いられるTetrazolium bromide(MTT)染色(Sutherland and Cohen, 1983)を応用し,O. virulentus 休眠胞子の生物活性を評価できる手法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 常法のMTT水溶液では休眠胞子はほとんど染色されないが、0.06%MTT、7.5%メタノールを含む52.5mMトリス-0.36Mグリシン(pH8.7)溶液中で休眠胞子は高率に青紫色に染色される(図1)。
2. 染色の温度は35℃,時間は1〜4日で良好に染色される(図2)。
3. 休眠胞子懸濁液をUV照射下に長時間置くほど染色される休眠胞子の数は減少し、60℃以上で5分間加熱殺菌処理した場合には全く染色されない(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 植物成分、土壌成分、薬剤および物理的ストレスなどに対するO. virurentus休眠胞子の応答を評価できる。
2. 染色液は使用直前に0.1%MTT水溶液1mlに対し、20%メタノールを含む0.14Mトリス-0.96Mグリシン (pH8.7)を 0.6ml 加えて調整する。
3. 染色温度が39〜43℃の場合も染色率は高いが,35℃に比べて染色が薄く,判定に適さない。

[具体的データ]
図1 MTTによるO. virulentus休眠胞子の染色
図2 染色温度(A)および染色時間(B)が休眠胞子染色率に及ぼす影響
図3 紫外線(UV)照射(A)及び温湯処理(B)が休眠胞子染色率と生存に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:難防除土壌伝染性ウイルスの圃場診断法および汚染軽減技術の開発
予算区分:指定試験
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:守川俊幸・堀井香織

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