イネのもみ枯細菌病と苗立枯細菌病の両方を防除できるファージ


[要約]
イネもみ枯細菌病菌とイネ苗立枯細菌病菌の両菌に感染するファージをイネ種子の催芽時に処理することにより、育苗期に発生する2つの病害を防除することができる。

[キーワード]イネ、ファージ、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病

[担当]石川農研・資源加工研究部・生物資源グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
これまでに、イネ苗立枯細菌病菌に感染するファージBPP-Yaを発見し、これを種子浸漬に用いることで、苗立枯細菌病の発病を抑制できることを明らかにしている。イネの育苗期には、苗立枯細菌病に加えてもみ枯細菌病の発生も多いことから、これら両病害を防除することができるファージを探索し、その防除効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. ファージBGPP-ArおよびBGPP-Saはいずれも、もみ枯細菌病菌(MAFF106715)と苗立枯細菌病菌(MAFF301723)の両病原細菌に感染し(表1)、病原細菌を混和した寒天培地上で小型のプラークを形成する(図1)。
2. 滅菌蒸留水で108pfu/mlに調整したBGPP-ArあるいはBGPP-Saファージ液を用いてイネ種子を催芽させると、もみ枯細菌病と苗立枯細菌病の発病を抑制する(表2図2)。
3. BGPP-Arによる、もみ枯細菌病および苗立枯細菌病に対する防除効果は高い(表2図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 処理による生育阻害等は認められず、BGPP-Arは防除資材として有望である。
2. もみ枯細菌病菌、苗立枯細菌病菌の両菌において、両ファージに感染しない菌株も認めている。

[具体的データ]
表1 分離ファージの病原細菌に対する感染性  図1 BGPP-Arによるプラーク例
表2 ファージ液催芽時浸漬処理によるイネ育苗期細菌性病害に対する防除効果
図2 BGPP-Ar催芽時浸漬処理によるイネ育苗期細菌性病害に対する防除効果

[その他]
研究課題名:IPM(総合的病害虫管理)による水稲の減農薬防除技術の開発
予算区分:国補(食の安全・安心確保交付金)
研究期間:2008年度
研究担当者:安達直人、塚本昇市、井上康宏(中央農研)、畔上耕児(中央農研)

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