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食の広場

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第1話 『食べ物にもいろいろな不思議があるんだねっ』

 私、優子。「夢が丘中学」の二年生。こんどの課外授業で各班、自分の住んでいる地域について調べなきゃいけなくなりました。でもうちの班って、お友達のともよちゃんはともかく、勇太と陽一だからな・・・。

優子「発表はもう来週よ。みんな一体どうするつもりなの?」

陽一「他の班は近くのお年寄りに話を聞いたりしているみたいだけど、僕たちは何をやろうか。」

優子「何をやろうか、じゃなくて、何かいいアイデアを出してよ。」

ともよ「あのー、皆さん・・・わたくし、ちょっといいもの見つけたんですけれど・・・
今度の土曜日にこの町中の研究所が、中を見学させてくださるそうですの。」

陽一「何々・・・研究所一般公開?」

勇太「どれどれ、○○研究所、研究所・・・けっこうたくさんあるもんだな。おっ、食べ物の研究所なんかいいんじゃないか。よし、ここに決定!」

先生「やあ、みんな、よく来たね。ところで君たちは、どうしてうちの研究所を見に来ることにしたんだい。」

優子「学校の自由研究で、私たちの身の回りのことについて調べなきゃいけなくなったんです。食べ物の話の方が面白そうってことになって。」

陽一「僕もおいしい物には興味あるし。」

先生「なるほど。確かに、みんな毎日ご飯食べてるわけだしね。それに、どうせならおいしい物を食べたいよね。でも昔々、人がまだ狩りなんかで食べ物を取っていた時代には、「おいしさ」なんてことを考えてる余裕なんかなかっただろうね。今だって食べ物が不足している地域の人達はとにかく生きるための栄養補給が第一なんだ。君たちも戦争や飢饉で食料が不足している地域に、飛行機や船で救援の食料を運んでいるところを、テレビなんかで見たことがあるだろ。」

ともよ「はい。」

先生「食べ物は、生きるための栄養を取るのに絶対に必要で、これがもっとも大切な働きなんだ。だから世界中の人達が少なくとも最低限の栄養を取ることができるようにするために、たくさんの学者がいろいろな研究を続けてきたんだ。」

陽一「僕、知ってるよ。たくさん取れるお米とかとうもろこしとかも作ったんでしょう。」

先生「それは「多収品種」っていうんだ。じゃあ、君たちは「緑の革命」っていう言葉を聞いたことがあるかな。これは品種だけじゃなくて、栽培方法も工夫してたくさんの食べ物を取れるようにしよう、という農業のやり方を大きく変えるアイデアだったんだよ。」

勇太「俺、初めて聞いた。」

ともよ「それにしても、せっかくたくさん取れたものを、ネズミさんや虫さんが食べてしまったり、かびを生やしたりしたら、悲しいですわね。」

先生「そうだね。そこで、そんなふうにならないように農家の人達が作ったものをしっかりと保管する方法や、栄養や味とかが変わらないようにして君たちの食卓まで運ぶ方法なんかも、いろいろと工夫されているんだよ。」

優子「そうなんですか....。」

ともよ「ところで話は変わりますが、今度おばさまが赤ちゃんを生むんですの。この前、テレビで「食べ物があぶない」っていう話を見たせいで、いろいろと心配しているのですが。」

陽一「そういえば昨日も『環境ホルモン』の話をやってたよ。」

先生「今、そういうのがよくテレビとかで放送されているみたいだね。でも実は環境ホルモンとかダイオキシンの毒性については最近、研究が始まったばかりだから、よく分かっていないことも多いんだよ。」

勇太「でも食べ物って安全じゃないとまずいんじゃないですか?」

先生「そうだね。食べ物って毎日、口にするものだから、いくらおいしくても安全に問題のあるものは食べ物として認められないんだ。だから「あぶないものが入っていないかどうか」見分ける方法や、食中毒を起こすバイ菌を殺す方法なんかも、ちゃんと研究しなくちゃいけないんだ。」

先生「それで話は戻るけど、人はおなか一杯食べ物を食べることができるようになって、栄養が充分に取れるようになると、こんどは「おいしい物を食べたい」と思うようになるものなんだ。豪華なフランス料理にしても中華料理にしても、もともとは貴族とかお金持ちの人達の、こんな気持ちから発達してきたんだろうね。もっともそんな時代には、そんな人たちの贅沢の陰で、食べる物がなくて泣いていた人達も多くいたんだろうけど。」

陽一「もともとフランス料理って、フランスの王妃がイタリアからやってきたときに、一緒に連れてきたコックさんが始めた料理なんでしょう。」

先生「良く知っているね。」

勇太「こいつの家、「日乃出食堂」っていう定食屋なんです。」

先生「じゃあ君の将来は名シェフというわけかな。」

優子「それほどのもんじゃないですよ。」

先生「いやー、それはわからないよ。未来の事はわからないという話をすれば、例えば半世紀年前と比べると今の日本じゃ普通の人達でもずいぶんと贅沢でおいしい物を食べられるようになってきている。」

勇太「そういや、うちのばあちゃん、戦争のころの話ばっかするんですけど、そのころに比べて僕らが贅沢だって、ご飯残したりするとすぐに怒るんだ。」

先生「そういう意味じゃあ今の日本に住んでいる君たちは幸せだね。」

ともよ「そうですわね。」

先生「こういう風においしい物が普通に食べられるようになると、次に出てきたのはどんなことだと思う。」

陽一「うーん、分かりません。」

先生「それは「体にいいものを食べたい」という気持ちなんだ。君たちも「これは○○に効く」とか書いているのを見たことがあるだろう。」

優子「はい。スーパーとかでよく見ます。でもあれって本当なんですか?」

先生「一概にはいえないけど、大抵のものにはそれなりの科学的な根拠はあるから、まるっきり嘘というわけでもないんだよ。」

優子「そうなんですか。へー、どんなふうに効くんだろう。」

先生「そうだね・・・もし君達がもっと詳しく食べ物のことを調べたいっていうなら、いつでも訪ねてきて、わからないことを聞いていったらいいよ。」

一同「そうですか。じゃあ、時々、おじゃましてもいいですか。」

先生「もちろんだとも。待ってるよ。」



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