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自然立地条件に基づく岩手県の畑地干ばつ地帯区分


岩手県立農業試験場・環境部・土壌改良科
[部会名] 総合農業
[分科会名]生産環境
[分類]  (3)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 暖候期の降水量と降水分布から岩手県は6地区に気象地帯区分される。
      • I県北内陸:暖候期を通して降水量が少ない。
      • II北部沿岸:県北内陸地帯に類似しているが、秋期(9〜10月)の降水量が多い。
      • III県南内陸:平均的な降水量であり、8月下旬に一時的に降水量が少なくなる。
      • VI県央:平均的な降水量であり、降水分布も偏りが少ない。
      • V南部沿岸:暖候期を通して降水量が多く、春・秋期の多雨が特徴である。
      • VI奥羽山系:暖候期を通して降水量が多い。夏期(6〜8月)の降水量が多い。
    2. 土壌断面形態、土壌水分特性から岩手県は4地区に土壌区分される。
      • 第1地帯<黒ボク土(風積性)地帯>
        有効土層が深く、透水性が良い。土壌の保水量も多い。
      • 第2地帯<黒ボク土、褐色森林土地帯>
        下層に砂礫・粘礫層が出現し、有効土層が浅い。表土の保水性は高い。
      • 第3地帯<褐色森林土、褐色低地土地帯>
        下層に重粘土層が出現し、有効土層が浅い。表土の保水量はやや少ない。
      • 第4地帯<褐色森林土地帯>
        下層に砂礫層が出現し、有効土層が浅い。表土は礫が多く、保水量は少ない。
    3. 気象及び土壌の特徴から過去の土壌乾燥状態を推定し、その結果から県内を5地区に 畑地干ばつ地帯区分を行った(図1)。
  2. 技術・情報の適用効果
    1. 降水分布の特徴(図2、時期別地帯区分図省略)から、 かん水対策を特に必要とする時期を把握することができる。
    2. 土壌の特徴(図3)から、土壌に応じたかん水方式 (時期、量、機材など)を地域別に判断することができる。
    3. 日別気象値(降水量、日照時間、気温)から定義した土壌乾燥指数と実測pF値との 関係から土壌pF値の推定式を求め、過去の地帯別の土壌水分推移の推定を行った (データ省略)。干ばつ発生やその被害程度の推定にこの方式を適用することにより、 従来方法(連続干天日数、出現頻度)より定量的に把握することができる。
  3. 適用の範囲
    岩手県全域
  4. 普及指導上の留意点
    1. 地帯区分は地域の標準値で行っているので、具体的な畑地かんがい効果の検討 については具体的な地域データを基に検討する必要がある。
    2. 岩手県における補給かんがい(狭義の畑地かんがい)の効果は、数年に一度の割で 発生する干ばつ時の減収を最低限保証するものであり、補給かんがいのみの畑地 かんがい施設の利用では投資効率が悪いと考えられ、水の多目的利用(広義の 畑地かんがい)を積極的に図る必要がある。


[その他の特記事項]
研究課題名:畑地かんがい地域における総合的水利用技術の確立
      農耕地土壌情報総合システムの実用化技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :昭和60年〜平成元年
発表論文等:なし