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リンゴの収益性に基づく小作料の負担力


青森県農業経営研究所
[部会名] 総合農業
[分科会名]経営
[分類]  (4)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 津軽地域を対象にリンゴ園の賃貸借における実勢小作料を見ると、多くの場合に 農業委員会が定めた標準小作料の水準を下回っており、実際の賃貸借契約の成立に 際しては料金について見る限り借り手市場にある。この背景として青森県産リンゴの 収量・価格の伸び悩み、規模拡大に伴う労働力の確保難等があり、これらが貸し手が 多くて借り手が少ないという状況をもたらしている。
    2. 借地による規模拡大に当たっては、小作料を負担し得る純収益を挙げられるか 否かが先ず問題となるが、生産費調整結果(60年〜63年)を基に青森県産リンゴの 小作料負担力を検討してみると、つがるの場合は各年次とも標準小作料を上回る 純収益を形成しているのに対して、スターキングはいずれも純収益はマイナス、 ふじは主に価格の低迷を反映して63年の場合は成園の標準小作料を負担し得ず 借地による規模拡大は困難な状況にある。
    3. これらの品種について標準小作料を負担し得る収量及び価格水準を検討してみると、 63年の価格(生産費調査)ではつがるが約3t、ふじが約3.5tの単収が必要であるが スターキングは4t水準まで単収が増加しても小作料を負担し得る純収益を形成しない。 また、青森県の平均単収に当たる2t水準で小作料を負担し得る純収益を確保する ためには、つがる及びふじでは約180円以上、スターキングでは約160円以上の価格が 必要である。
    表1. 標準小作料とその負担力
  2. 技術・情報の適用効果
    リンゴ園の借地による規模拡大に当たって必要な品種別の収量及び価格水準の 検討資料となる。
  3. 適用の範囲
    標準小作料を負担し得る収量及び価格水準については津軽地域の面積1.5ha、 家族労働力2.5人の農家を想定している。
  4. 普及指導上の留意点
    実勢小作料は、ケースにもよるが標準小作料を下回っており、その意味では実際の 賃貸借契約の成立に際して、標準小作料を負担し得る価格水準等はこの事例で示した 値を下回ることもある。


[その他の特記事項]
研究課題名:リンゴ園経営の安定化に関する研究
予算区分 :県単
研究期間 :昭和63年〜平成元年
発表論文等:「農業経営研究資料第38号(青森県農業経営研究所)」