研究所トップ研究成果情報平成元年度

水田微気象モデルと水管理エキスパートシステムの開発


東北農試・地域基盤研・気象特性研究室
[部会名] やませ環境
[分科会名]
[分類]  (3)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 絶えず変化する水田内の微気象(風速、気温、水温等)を推定する水田微気象モデル とそれを利用した水管理エキスパートシステムを開発した。 図1は水田微気象モデルの全体を表現したもので、 外枠に示した群落上の日射、気温等の気象要因、草丈等の作物要因、水深等の 水体要因と任意深さの地温等の土壌要因の各値が与えられると、図中央の風速、 気温、比湿、二酸化炭素、葉温、水温、地温が推定できる。推定の精度は実用的に 十分であることを確認した(図1)。
    2. 水田微気象モデルで推定した微気象値を水管理に利用するために、稲作指針情報を 組み込んだ診断型水管理エキスパートシステムを開発した。このエキスパートシステム は日射、気温、灌水温等と生育に適した水深及び灌水時間等から判断して、 最適な水深及びその時の水温を決定する。日射、気温等の時間値を用いれば 逐次予測が可能となり、天気予報等を利用すれば、より気象をいかした水稲の 生育・水管理ができる。
      図2はアキヒカリの幼穂形成期における逐次予測の 結果である。水深は日射や気温、灌水温等によって変化し、制御されていることが わかる。活着期や出穂期等においても、稲作指針等の知識ベースに基づいて正しく 判断されていることがわかった(図2)。
    3. パソコンで利用できる水田微気象モデルと水管理エキスパートシステムの プログラムを作成した。
  2. 技術・情報の適用効果
    水田微気象モデルは汎用性が高いので蒸発散の研究や水稲の生長モデルとの結合 によって生育管理等に利用できる。また、水管理エキスパートシステムはやませ 地帯及び冷害気象下における水田の水管理に適用できる。
  3. 適用の範囲
    汎用モデルおよび汎用システムであるので適用の制限はない。
  4. 普及指導上の留意点
    水田微気象モデル及び水管理エキスパートシステムは灌水状態の水田で利用する ものであり、適用できるのは活着期から出穂期である。水稲の生育特性や土壌の 物理特性が大幅に異なる場合には、対照表を修正する必要がある。


[その他の特記事項]
研究課題名:水田微気象予測システムの開発
予算区分 :別枠研究
研究期間 :昭和60年〜平成元年
発表論文等: