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多湿・濡れ環境下の作物試験のための霧チャンバー


東北農業試験場・地域基盤研究部・気象環境制御研究室
[部会名] やませ環境
[分科会名]
[分類]  (3)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 霧による多湿あるいは濡れを伴う環境を、圃場で簡易に再現できる霧チャンバーを 開発した。
    2. チャンバーは市販のパイプハウスの妻面に換気扇を設置し、反対側の妻面から 外気を導入する構造である。外気の流入口に細霧冷房用のノズルを取付け、 高圧ポンプで霧を発生する(図1)。
    3. 今回試作したチャンバーの場合、ハウスは間口3.6m、奥行き10mである。換気扇には、 羽根径30cm、公称出力50W、公称風量毎分28立方メートルのものを2台、また噴霧 ノズルは、10気圧で作動時に平均粒径30μmの霧を毎分約100cc発生する能力の ものを4個使用した。高圧ポンプには、電動式の動力噴霧器を利用した。
    4. 本装置は、市販の安価な資材で製作可能なこと、ノズルの個数や換気量の調節で、 霧発生量、霧濃度、濡れの程度を容易に加減できること、ハウス内に温度傾度が 生じるため、それを利用して温度条件の異なる環境を得られること、ハウス外面に 寒冷紗を被覆することにより、低日射条件を再現できることなどの特徴がある。
  2. 技術・情報の適用効果
    1. 外気の流入口から3m程度で実際の霧濃度に近い状態となる (図2)。今回の設計(噴霧量を流入外気を飽和 するのに必要な水量の2〜3倍とした)では、この濃度が濃いやませ霧の状態に 相当する。
    2. 濡れの程度(ろ紙で測定)も、同様の傾向である (図3)。奥行方向の違いを利用することにより、 試験対象物の濡れの状態を変えられる。
    3. 換気量を変えることにより、ハウス内の温度傾度を調節できる (図4)。これにより、ほぼ同じ温度状態で霧の 有無の影響を比較できる。
    図5. 日中の霧による温度変化の例
  3. 適用の範囲
    作物を霧で濡らすこと、あるいは多湿な環境にさらすことを目的とした装置である。 耕地上の霧の挙動や群落内の流れなど、物理的な現象の解析には適さない。
  4. 普及指導上の留意点
    内部の環境が屋外の気象条件に左右されるため、あらかじめ適正な噴霧量と換気量を 求めておく必要がある。条件によっては、電磁弁で噴霧量を制御するのが望ましい。


[その他の特記事項]
研究課題名:冷湿少照下における気孔開度と作物体温の動的解析
予算区分 :やませ霧(特研)
研究期間 :平成元年
発表論文等:第3回やませ研究会(1990.10)