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2シーズン放牧牛の肥育管理技術


岩手県畜産試験場・肉牛部
東北農業試験場・栄養生理研究室
[部会名] 畜産
[分科会名]
[分類]  (2)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    子牛(秋の子牛市場で入手)の冬期育成期−放牧(2シーズン目)期−仕上げ肥育期に おけるステージ別増体配分と産肉性について解明した。
    1. 粗飼料多給の冬期育成および仕上げ肥育に用いるグラスサイレージとコーンサイレージ について比較すると、グラスサイレージ単独では冬期育成期に0.5kgのDG確保が 難しかったが、その後の放牧期において高いDGが達成された。また、仕上げ肥育期に おいては濃厚飼料給与を体重の1.2-1.3%として、良質のサイレージを飽食させると 両サイレージの場合とも0.9kg以上のDGが確保できた(岩手畜試) (表1)。
    2. 仕上げ肥育期において、全乾物摂取に占めるグラスサイレージからの摂取比率を23 および34%(TDNの比率では18%,27%)で比較しても肉量・肉質には差異を 認めなかった。高品質のサイレージであれば給与水準をさらに高めることが可能と 判断された(東北農試)(表2)。
    3. 日本短角種の素牛(子牛市場に出荷時)の発育状態によって大型(体高平均111cmあるいは 107cm)と小型(体高平均102cm)を2シーズン放牧の際に仕上げ肥育すると、大型の牛では 脂肪蓄積が少なく、赤肉生産が多い傾向にあった。大型区では肢骨の測定値も大で あった。小型の牛で赤肉割合を高めるには仕上げ体重を600kg程度に抑えて 出荷するのが望まれる(岩手畜試、東北農試)(表3)。
  2. 技術・情報の適用効果
    1. 2シーズン放牧牛の肥育では、脂肪蓄積が少なく、赤肉割合の多い枝肉を生産できる。
    2. 冬期育成にグラスサイレージ主体で飼養すると増体がやや劣るが、次の放牧期 (2シーズン目)には高い増体が可能であり、越冬飼料の利用効率が改善される。
    3. 日本短角種では発育タイプの変動が大きいが、子牛期の発育状態によって肥育特性を 事前に判断して、肥育終了時期の適正化が可能となる。
    4. 貯蔵粗飼料が高品質であれば、粗飼料多給によっても高い増体が可能となり、 赤肉生産の増大につながる。
  3. 適用の範囲
    日本短角種の生産地帯およびその肥育経営
  4. 普及指導上の留意点
    冬期育成および肥育期とも、給与する粗飼料とくにサイレージの品質によって 増体が大きく影響されるので、サイレージの品質向上が不可欠となる。


[その他の特記事項]
研究課題名:放牧育成牛の冬期粗飼料多給による肥育技術の実証(岩手畜試)
      放牧育成牛の肥育における可食肉生産量向上技術の開発(東北農試)
予算区分 :特別研究「草地肉用牛」
研究期間 :昭和61〜63年度
発表論文等: