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ぎ酸カルシウム剤散布によるリンゴのビターピット防止
青森県りんご試験場・化学部
[部会名] 果樹
[分科会名]
[分類] (1)
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[成果の内容]
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技術・情報の内容及び特徴
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リンゴ果実のビターピットは果実中のカルシウム濃度が低いと発生が多く、果実への
カルシウム補給により防止できる。従来、防止対策の一つとして果実の生育期に
おける塩化カルシウム剤散布が普及されてきたが、8月以降は薬害を生ずるため、
使用時期が7月下旬頃までに限定されていた。
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ぎ酸カルシウム剤(商品名:スイカル)は使用濃度300倍で8月以降の散布でも薬害の
発生がなく、7月下旬から9月中旬頃までに10日間隔で3〜5回散布することにより
ビターピット防止効果のあることが確認された。
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これにより夏期以降にリンゴ樹の樹勢や果実の肥大状況などからビターピットの
発生が予想される場合に応急的に対策を講ずることができる。
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リンゴの品種によっては収穫後の果実の表面にワックス成分が出て「油あがり」と
呼ばれる現象を生ずるが、ぎ酸カルシウムを散布した場合これが抑制され、
また、果実の硬度を高めるという副次的効果のあることが確認された。
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技術・情報の適用効果
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圃場において8月初めからぎ酸カルシウム(スイカル)300倍をおよそ10日間隔で
3〜5回散布した場合、収穫果実中のカルシウム含量が対照区(スイカル無散布)に
比較して高かった。その結果、散布区では収穫期及び貯蔵中におけるビターピット
発生率が無散布区に比較して明らかに低下し、ビターピット防止効果が認められた
(表1)。
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散布区と無散布区の収穫果実の酸度及び糖度(屈折計示度)をみると散布区でそれらが
低い値を示した例もあるが、多くの場合、両区の差異はみられなかった。硬度を
比較すると散布区の果実が高い傾向を示した
(表1)。
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貯蔵中果実の油あがりは、散布区の果実では無散布区に比較して発生率が低く、
発生程度も軽かった(表2)。
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適用の範囲
東北全県
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普及指導上の留意点
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高温時及び干ばつ時に散布すると葉緑に褐変を生ずるおそれがあるので散布を避ける。
[その他の特記事項]
研究課題名:生理障害防止
予算区分 :県単
研究期間 :昭和58年〜
発表論文等:昭和62,63年度,平成元年度 寒冷地果樹試験成績概要集
(土壌肥料,流通利用)
平成2年度 東北農業研究(果樹部会)