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耐冷性極強・極良食味水稲新品種「ひとめぼれ」
宮城県古川農業試験場・育種部・育種科
[部会名] 総合農業
[分科会名]稲
[分類] (1)
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[成果の内容]
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技術・情報の内容及び特徴
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水稲新品種「ひとめぼれ」は東北中南部では中生に属する粳種で、耐冷性極強・
良質・極良食味の特長を持つ。平成3年度より岩手、宮城、福島の各県で奨励品種に
採用された。さらに、関東地方の早期栽培及び温暖地、暖地の高冷地帯でも、
平成4年度以降奨励品種採用が見込まれる。
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食味が極良好で耐冷性の強い品種の育成を目標として、平成57年に「コシヒカリ」を
母、「初星」を父として人工交配を行い、F5単独系統から耐冷性及び
食味に重点をおいて選抜育成した。昭和63年F8より地方系統名を付し、
地域適応性を検討してきたもので、平成3年はF11である。
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出穂期は「ササニシキ」並、成熟期は「ササニシキ」より5〜6日早く、育成地では
中生の晩である。
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稈長は「ササニシキ」よりやや短く、穂長は「ササニシキ」よりやや長く、穂数は
「ササニシキ」よりやや少なく、草型は偏穂数型である。耐倒伏性は「ササニシキ」
よりやや強く、やや弱である。良質で、食味は極めて良好で「ササニシキ」に優る。
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障害型耐冷性は極強。いもち病の真性抵抗性遺伝子型はPi-iと推定され、圃場抵抗性は
葉いもちはやや弱、穂いもちは中である。白葉枯病抵抗性はやや弱。穂発芽性は
難である。収量は「ササニシキ」に優る。
表1. 「ひとめぼれ」の特性概要
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技術・情報の適用効果
東北地方中南部は良質・良食味米「ササニシキ」の一大生産地帯であるが、近年頻発
する冷害により生産が不安定となり、「ササニシキ」以上の良質、良食味で安定性の
高い品種が要望されている。
「ひとめぼれ」は出穂期が「ササニシキ」並であるが、成熟期はやや早く、障害型
耐冷性は極強で、食味も「ササニシキ」に優り極めて良好であり、当該地域において
良質・良食味米の生産安定化が期待される。
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適用範囲
東北地方中南部の平坦部の外、関東地方の早期栽培及び温暖地、暖地の高冷地帯。
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普及指導上の留意点
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いもち病圃場抵抗性は葉いもちは「ササニシキ」並のやや弱、穂いもちは中程度で
あるので適期防除に留意する。
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種子の休眠性が強いので、催芽前の浸漬を十分に実施する。
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一穂籾数が少なく、穎花数が取りにくいので、健苗育成等により、有効茎の早期確保に
努める。
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耐倒伏性は「ササニシキ」より強いが、やや弱なので追肥は多すぎないように注意
する。
[その他の特記事項]
研究課題名:寒冷地中部向水稲良質品種の育成
予算区分 :指定試験
研究期間 :昭和57年〜平成2年
発表論文等: