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香り米水稲新品種「はぎのかおり」


宮城県古川農業試験場・育種部・育種科
[部会名] 総合農業
[分科会名]稲
[分類]  (1)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 水稲新品種「はぎのかおり」は育成地では中生の晩に属する粳種で、香り米の 安定多収品種である。平成3年度より宮城県で奨励品種に採用された。
    2. 昭和56年に香り米の安定多収品種の育成を目標として、古2986(後の「みやかおり」) に、東北125号(後の「コガネヒカリ」)の戻し交配を行い、初期世代から香りによる 選抜を加えながら育成した。昭和63年度から「東北144号」の系統名で、東北中南部 各県で地域適応性の検討を行ってきたもので、平成3年はB1F11 である。
    3. 「みやかおり」と比較して、出穂期、成熟期とも5日程度晩く、「ササニシキ」並で 育成地では中生の晩である。
    4. 稈長は「みやかおり」よりわずかに長く、穂長は長く、穂数はほぼ同程度であり、 草型は中間型である。耐倒伏性は「みやかおり」並のやや弱である。フ先色は褐色 である。穎色は褐条で「みやかおり」より淡い。玄米千粒重は「みやかおり」と 同程度。玄米品質は「みやかおり」に優る。
    5. いもち病真性抵抗性遺伝子型はPi-aと推定され、葉いもち・穂いもちの圃場抵抗性は ともにやや強である。白葉枯病抵抗性は弱である。障害型耐冷性は中程度。穂発芽性は 中程度である。
    6. 収量は、対照品種の香り米「みやかおり」より明かに多収で、普通品種の 「ササニシキ」並で、香り米としては極めて多収である。
    7. 香りの強さは「みやかおり」と同じである。炊飯する場合の混米率は、3〜5%が 適当で、1%では香りが薄すぎ、10%では強すぎる。
    表1. 「はぎのかおり」の特性試験
    表2. 食味試験成績
    表3. 混米率と食味
  2. 技術・情報の適用効果
    宮城県で栽培されている香り米改良品種「みやかおり」は、香り米の在来品種より 耐倒伏性・収量性等は優れているが、中生の早で耐冷性が弱いため、障害不稔が発生 する危険性が高い。
    「はぎのかおり」は「みやかおり」に比べ出穂期及び成熟期は晩いが、香りの強さは 同じで、収量及び玄米品質は明かに優り、いもち病、耐冷性も安定しているので、 「みやかおり」に替えて普及することによって、香り米生産の一層の安定化と特殊用途 米による産米の需要拡大が期待される。
  3. 適用の範囲
    東北中南部の平坦地
  4. 普及指導上の留意点
    1. 多肥では香りが低下する傾向が見られるので、極端な多肥栽培は避ける。
    2. 香りを確保するため、適期刈取りに努める。
    3. 香りの低下を防止するため、機械乾燥の場合は、高温による急激な乾燥を避ける。


[その他の特記事項]
研究課題名:寒冷地中部向水稲良質品種の育成
予算区分 :指定試験
研究期間 :昭和56年〜平成2年
発表論文等: