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柱頭観察による水稲冷害不受精の早期判定法


青森県農業試験場・藤坂支場
[部会名] 総合農業
[分科会名]稲
[分類]  (2)

[成果の内容]
  1. 技術・情報の内容及び特徴
    1. 開花終了後1〜2日以上経過した穂について、頴花を手で開頴しピンセットで柱頭を 傷つけないように取り出し、40倍程度の顕微鏡または虫めがね等で柱頭の状態を 観察する。
    2. 柱頭の基部付近が萎凋したり、折れたりしている場合は受精籾と判定する。
    3. 柱頭の部分に殆ど変化が見られない場合は、不受精籾と判定する。
    4. 子房がある程度肥大している場合でも、柱頭が萎凋していない場合は不受精籾 (単為結果籾、偽稔)と判定する。
    5. この判定方法に習熟すると、子房を抽出しなくても開頴後虫めがねで観察するだけで 判定ができるようになる。
    6. 判定の根拠: 不受精籾が殆ど発生しない条件下で生育させた穂について、開花終了後 経時的に柱頭を観察したところ、開花翌日には柱頭の基部付近が萎凋したり、折れたり しているのが観察された。一方、完全不受精を発生させるほどの強度の低温処理した 穂について、同様に柱頭を観察したところ、開花後数日たっても柱頭は変化せず、 この状態は長期間続いたことから、開花後の柱頭の状態を観察することにより受精の 有無が早期に発見できることが明らかになった。
    図1 受精及び不受精籾の柱頭
  2. 技術・情報の適用効果
    障害不受精の早期判定が可能となることから、被害の早期把握と冷害対策 (技術、農政、経営等)のすみやかな対応ができる。
  3. 適用の範囲
    1. 穂ばらみ期、開花期のいずれの障害不受精に対しても有効である。
    2. 単為結果籾(偽稔籾)の判定も可能である。
  4. 普及指導上の留意点
    1. 開花終了当日が異常低温等で開花が不順であった場合は、開花翌日ではなく更に 1日おいて調査する。
    2. 適温下で開花した場合でも、翌日の早朝ではなく、午後に調査する。


[その他の特記事項]
研究課題名:柱頭観察による水稲障害不稔の早期判定法
予算区分 :県単
研究期間 :1988年〜1989年
発表論文等:日本作物学会東北支部会報 第33号('90)